脅し文句って、繰り返すほど効かなくなるのよね。
子供の頃、親に「今度やったら本当に怒るからね」って100回言われたでしょ。101回目、あなたもう怖くなかったはずよ。市場も同じ。昨日、それを見事に証明してくれたの。
8月24日、アメリカのベッセント財務長官が、イランに対する新しい制裁を発表したの。名前からしてもう大げさ。その名も「Operation Economic Outcast」。直訳すると「経済的のけ者作戦」。イランを世界経済から爪弾きにして、干上がらせるって宣言よ。
ベッセントさん、言葉選びに全力だったわ。「経済版Dデー」「敵対国に対して史上最大の金融攻勢」「テヘランが独りぼっちになるまで、あらゆる経済的パイプを断つ」。もう完全に映画の予告編のノリ。
で、この最強の宣言を受けて、原油価格がどう動いたと思う?
下がったのよ。2ドル以上。
なぜ「最強の制裁」で原油は下がったのか
普通、産油国への制裁が強まれば「原油が減る→値上がり」って動くはずでしょ。なのに逆。理由は身も蓋もないの。みんな、もう聞き飽きてたから。
ベッセントさんもトランプさんも、少なくとも前週から「史上最も厳しい制裁」「前例のない規模の経済戦争」と盛大に予告してたの。だから24日の発表を聞いた市場からすると、「はいはい、その話しね」。
アナリストも「事前に予告されていた以上の新しい内容はあまりなかった」ってバッサリ。前週までに原油はかなり上がってたから、むしろ「じゃ、ここで利益確定しとくか」で売られたのよ。
これ、人間関係でもあるやつよ。「別れる別れる」って毎週言ってくる友達の恋愛相談、3回目からもう真剣に聞いてないでしょ。市場もそれ。狼少年が「狼が来た!」って史上最大の声で叫んでも、村人は寝てるの。
今回の制裁、何がそんなに「史上最強」なの?
とはいえ、中身が全部ハッタリかというと、そうでもないの。今回の本丸は「二次制裁」ってやつ。
普通の制裁が「イラン、あんたとは取引しない」だとしたら、二次制裁は「で、イランと取引してるそこのあなた。あなたも対象になるかもしれないわよ」ってやつ。
ベッセントさんは「誰もアメリカの制裁の射程外ではない」と宣言。「イラン資金の洗浄に関与すればドルへのアクセスを遮断する」ってやつが、まさにこれ。世界の貿易はドルで回ってるから、「ドルを使わせない」は現代の兵糧攻めとして相当効く。
ただし、ここ大事。24日の時点で世界中のイラン取引企業を一斉にドル経済から追放したわけじゃないの。誰を、いつ、どこまで制裁するのかは、まだ明らかにしてない。
つまり今は「全員廊下に立ちなさい」じゃなくて、「先生、誰がやったかだいたい分かってますからね」の段階。こっちのほうが怖い気もするけど。
すでに約60の企業・個人・船舶などを制裁対象にしていて、さらに暗号資産・テクノロジー・金・航空・海運の5分野を次の標的候補として警告済み。暗号資産と金が入ってるのが今っぽいわね。制裁を逃れる抜け道が、そこにできてたってことだから。
本丸は中国。世界を巻き込んだ、瞬き禁止大会
でもね、この作戦の成否を握ってるのは、イランだけじゃない。中国よ。
中国は長年、イラン産原油の最大の買い手。だからアメリカがどれだけ「イランを経済的に孤立させる」と叫んでも、中国が買い続ける限り、イランの生命線は完全には切れないの。
実際、エネルギー分析会社のRystad Energyも「中国がさらに大幅に購入を減らさない限り、イランの石油収入への追加ダメージは限定的になり得る」と指摘してる。
そして中国はさっそく「制裁や圧力では問題は解決しません」と反発。はい出ました。
アメリカ「イランと取引するなら覚悟してね」
中国「知らんがな」
イラン制裁という看板を掲げてるけど、奥のほうでは米中がじっと睨み合ってるのよ。しかも怖いのは、どっちも先に目をそらしたら負けだと思ってること。世界経済を巻き込んだ、瞬き禁止大会。
勘違いしちゃいけないこと
ここ、大事だから言っておくわね。
原油が2ドル下がったからといって、「市場はもうイランなんて心配してませーん」って話しじゃないの。
ブレント原油はそれでも92ドル台。ホルムズ海峡の通航は大幅に減ったまま。モルガン・スタンレーは、今年の第4四半期にブレント原油が100ドルでピークをつける可能性を見てる。
つまり市場の反応は「危険じゃない」じゃなくて、「その危険、もう知ってる」なの。
火事が消えたんじゃないのよ。火災報知器の音に、慣れただけ。これが一番怖いの。
実はね、今回の話しの本当のテーマって「制裁が効く・効かない」じゃないの。「市場はニュースそのものじゃなく、”予想との差”で動く」ってことなのよ。「史上最強」っていう形容詞が値段を動かすんじゃない。市場が想像してた以上だったか、以下だったか。動かすのは、いつだってその差だけ。
日本のあたしたちへ
「中東の話しでしょ」って流したいところだけど、今回ばかりは財布に直結してるの。
まず原油。ホルムズ海峡の通航は今も大幅に制限された状態で、週末はたった十数隻まで減ってるの。日本が輸入する原油の大半はこのホルムズを通るから、ここが詰まると電気代もガソリン代も上がる。昨日は原油が下がったけど、それは「危険が消えた」からじゃなくて「もう織り込んだ」だけ。封鎖という現実は、何も解決してない。
そして円。地政学が荒れると、そのたびに為替が揺れて、輸入物価に跳ね返る。あたしたちの生活は、遠いペルシャ湾の船の数に、地味に人質に取られてるのよ。
対策らしい対策はないんだけど、ひとつだけ。こういうニュースで「原油100ドル!」みたいな見出しに毎回びっくりして、慌てて何かを売ったり買ったりしないこと。市場ですら「はいはい」って聞き流してるんだもの。あたしたちが一番冷静でいるくらいで、ちょうどいいわ。
今日のまとめ
- アメリカが「史上最強」の対イラン制裁「Economic Outcast」を発表。でも原油はむしろ2ドル超下落
- 下がった理由は制裁が弱いからじゃなく、前週から予告し続けて市場が織り込み済みだったから。狼少年の法則
- 今回の肝は「二次制裁」。ただし対象も時期もまだ未定。「だいたい分かってますからね」の段階
- 本当の相手はイランじゃなく中国。制裁という名の、米中の瞬き禁止大会
- 原油が下がっても危険は消えてない。市場は火事じゃなく、火災報知器の音に慣れただけ
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
Markets don’t fear the news. They fear the surprise.
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※本記事はブルームバーグ、ロイター、CBS、CNBC、ワシントン・ポスト、APの公開情報をもとに構成しています。


