昨日、FOMC(アメリカの中央銀行FRBの会合)の記事を書いたわよね。「金利は動かなかった。なのに全部動いた」って。
そして今日、太平洋のこっち側で、日銀も金利を据え置いたの。
結果だけ並べると、双子みたいに似てるわ。
| FRB(7/29) | 日銀(7/31) | |
|---|---|---|
| 決定 | 据え置き | 据え置き |
| 反対した人 | 3人が「利上げしろ」 | 高田委員が「利上げしろ」 |
| 通貨 | ドル安 | 円買い介入 |
据え置き、身内からの利上げ反対、通貨が動く——ここまでは瓜二つ。昨日「太平洋の両側で同じドラマ」と書いた通りよ。
でも、決定的に違ったのは一つだけ。——“何を言ったか”よ。FRBのウォーシュ議長は肝心なことを何も言わなかった。でも日銀の植田総裁は——踏み込んだの。今日はこの一週間のクライマックスと、その”分かれ道”を解剖するわよ。
その1:日銀は据え置き(でも6月に既に動いてた)
まず決定から。
日銀は政策金利を1.0%に据え置いたわ。植田総裁ら8人が賛成。
ここ、勘違いしやすいから正確に言うわね。「日銀、また動かないの?」じゃないの。日銀は6月に、政策金利を1%へ引き上げたばかりなの。約31年ぶりの高水準よ。今回の据え置きは「動かない」じゃなくて、「6月に上げたばかりだから、その効果を見極める」という様子見なの。
一度大きく上げた。だから今回は一回休み。先月2キロ落とした人が、今月はキープしてる状態ね。
その2:日銀にも「造反」がいた
そして、昨日のFRBと重なるのがここ。
高田創審議委員が1人だけ反対して、追加利上げを提案したの(1.25%への利上げ)。否決されたけどね。
昨日のFRBでは3人が「利上げしろ」と造反したわよね。日銀では高田委員が同じことをやった。「多数派は様子見、でも一部は”今すぐ上げるべき”と気が急いてる」——この構図が、太平洋の両側でそっくりなの。
理由も同じよ。原油高、円安、物価の上振れ。「このままインフレが進むなら、のんびりしてる場合じゃない」という焦りが、日米どちらの委員会にも一定数いるってこと。中央銀行の中は、どこも一枚岩じゃないのよね。
その3:そして深夜、”飛び道具”が火を噴いた
ここが今週いちばんの見どころ。日本にはアメリカになかった切り札があったの。
前日の深夜(7月30日)、円が突然、急騰したの。
162円80銭あたりでウロウロしてた円が、わずか10分ほどで、157円98銭まで跳ねた。5円近い急反発よ。カナダの金融機関CIBCは、この動きを「典型的な為替介入の兆候」と指摘してる。
10分で、この動き。普通の値動きじゃないの。市場では「政府・日銀が円買い介入に踏み切った」という観測が一気に広がったわ。
そもそも為替介入って何?
一回説明するわね。為替介入は、政府(財務省)が、円安を止めるために市場で大量に「円を買ってドルを売る」こと。円安が行き過ぎた時の、当局の”実力行使”よ。
イメージはこう。円安は「円の投げ売りセール」みたいな状態。誰も円を欲しがらないから値段が下がってる。そこに政府が「じゃあウチが円を大量に買います!」と札束を持って乱入する。買い手が現れれば、値段(円の価値)は上がる。要は、国家が自腹で円を買い支えるの。——しかも、勝てる保証はないまま。
日本は今年4月にも一度、この介入をやってるの。約1年8ヶ月ぶりに。だから市場は「40年ぶり安値圏なんだから、2回目の介入があるぞ」とずっと警戒してた。そこに深夜の急騰。タイミングも動き方も、介入そのものだったわ。
でも、当局は「認めない」
面白いのがここ。介入したくせに、当局は認めないの。
片山財務相は、介入について聞かれて「お答えできない」。三村財務官は「米から支援(日米で協調してる)」とだけ。「やりました」とは、絶対に言わないのよ。
なんで認めないと思う?手の内を見せないためなの。「介入しました」と手を挙げたら、市場に「いくら使った?もう弾切れ?」と足元を見られる。だから、やったのに黙る。「昨日パーティーいた?」と聞かれて「さあ、どうだったかしらとはぐらかす人」みたいなものね。全員が「いたでしょ」と分かってるのに。
しかも、狙って撃ってる
面白い指摘があるの。みずほの中島氏によると、前回4月の介入も、実はFOMCの翌日だったの。そして今回も、7月29日のFOMCの翌日、7月30日深夜。同じパターンよ。
これ、偶然じゃないの。FOMCが終わると、市場は「アメリカの金利の方向性」を消化しようとして、為替が動きやすくなる。当局はその隙を狙って介入してるの。FRBの会合が終わるのを待って、ドルが揺れる瞬間に円を買う。
つまり今週の「日米中銀ダブルヘッダー」は、日本の当局にとっては介入の絶好の舞台装置でもあったわけ。動かないと決めたFRBの陰で、日本は静かに引き金に指をかけて待ってた。行き当たりばったりに見えて、案外、計算ずくなのよね。
ちなみに、次の介入がいつくるかを測る目安として、市場では「3日連続」のIMFルールなんてものも意識されてるの。介入には国際的な暗黙の作法があって、あんまり連日やりすぎると「為替操作」と見られる。だから当局も、撃つ回数とタイミングを計算してる。派手に見えて、実は綿密な計算のうえの一撃なのよ。
その4:ところが植田総裁は、意外と踏み込んだ
さあ、午後3時半からの植田総裁の会見。ここが今日の”分かれ道”よ。
昨日のウォーシュFRB議長を思い出して。「インフレ目標は2%だけ」を繰り返すだけで、「次の利上げは?」には何も答えなかった。徹底して言質を与えなかったの。
植田総裁は、違った。
まず、日銀が重視する基調的な物価上昇率について、こう言ったの。「2%の物価安定目標を”超えて”上振れするリスクがある」。そして——「環境が緩和的すぎる時は、利上げペースを早めることもありうる」。
これ、地味な言い回しに聞こえるけど、中央銀行トップの発言としてはかなり踏み込んでるの。「物価が目標を超えて上がるかもしれない」=インフレ警戒を強めた。「利上げのペースを早めることもある」=次の利上げが、市場の想定より早いかもしれないという示唆よ。
ここで日米の非対称が浮かび上がるの。
- ウォーシュ議長(FRB):「2%を超えさせない」=上から抑える立場。そして時期は沈黙
- 植田総裁(日銀):「2%を超えて上振れも」=下からようやく到達しつつある立場。そして利上げ加速を匂わせた
同じ「2%」を語ってるのに、片や”超えさせない”、片や”超えるかもしれない”。立ち位置が真逆なの。アメリカはインフレを抑え込む側、日本はようやくインフレが根付いてきた側。同じ数字の、正反対のドラマよ。
会見では他にも見どころがあったわ。高市政権が利上げに慎重で「日銀の独立性が脅かされてる」という見方に対して、植田総裁は「我々は引き続き自らの判断と責任のもとで金融政策を運営する」と、政治的圧力に屈しない姿勢を明言。冒頭では熊本地震(最大震度7)にも触れて、金融機能の維持に万全を期すと述べたわ。政治にも災害にも目配りしつつ、金融政策の芯は「利上げ路線」でぶらさなかった、という会見だったの。
その5:で、結局どうなった? 円は戻った
一番大事なオチ。
日銀は据え置き。でも植田は利上げ加速を匂わせた。おまけに前夜、政府は数兆円の介入までやった。「口ではタカ派、手では実弾」の合わせ技よ。普通なら、これだけやれば円高に振れるはず。
ところが——円は、160円88銭まで下落したの。
介入のピーク(157円98銭)から、また2円以上も円安方向に押し戻された。植田のタカ派発言でも、円安の勢いが「ちょっと鈍った」程度。言葉でも、実弾でも、円安の流れは止められなかったの。
なぜか。根本原因——日米の金利差が、何も変わってないから。アメリカの金利は高いまま(昨日FRBが据え置いた3.50〜3.75%)、日本は1.0%。この差がある限り、お金は利息の高いドルに流れ続ける。植田が「いつか利上げする」と匂わせても、”いつか”じゃ今の金利差は埋まらないのよ。
介入は、川の流れを手のひらでせき止めるようなもの。一瞬は止まる。でも手をどければ、また流れ出す。今日は、当局が言葉と札束を総動員したのに、それでも市場が押し返した——「円安を止めたい当局」と「金利差で円を売りたい市場」の綱引き。今のところ、まだ市場が勝ってる。
介入に使ったお金は、おそらく数兆円規模。それで買えた円高は、半日で溶けた。数兆円で、半日。——世界で一番高い”時間稼ぎ”かもしれないわね。
あたしたちはどう見ればいいの?
正直に言うわ。今週、中央銀行が2つとも「動かない」と決めて、当局が介入までして、日銀総裁がタカ派発言までしたのに、あなたの生活は、たぶん今日も何も変わってない。
でも押さえておくことは3つ。
① 介入で円高になっても、飛びつかない
「介入で円高!今のうちにドル資産を!」みたいな動きは危険よ。介入の円高は一瞬で、根本(金利差)が変わらなければ元に戻る。今日、実際に160円台に戻ってるのがその証拠。一時的な値動きで資産配分を変えないのが鉄則。
② でも、日銀の”次”は近いかもしれない
今日は据え置きだったけど、植田は「利上げペースを早めることもありうる」と言った。日銀が本当に動けば、日米金利差が縮まって、円の流れが変わる可能性がある。介入みたいな一時しのぎと違って、利上げは根本に効くの。日銀の次の会合は要チェックよ。
③ 円安トレンドは、まだ終わってない
介入も口先タカ派も「時間稼ぎ」であって「転換点」じゃない。実際に金利差が縮まるまで、円安の地合いは続く。輸入物価=スーパーの値札は、当面まだ重いままと覚悟しておいて。
今週のまとめ
- FRB(7/29)・日銀(7/31)ともに政策金利を据え置き。日銀は6月に31年ぶりの1%へ利上げ済みで、今回はその効果を見極める様子見
- 両会合とも身内から利上げ提案の反対(FRB3人、日銀は高田委員1人)
- 7/30深夜、円が10分ほどで162円台後半から157円98銭へ急騰。CIBCは「典型的な介入の兆候」と指摘。前回4月もFOMC翌日で、今回も同じパターン。片山財務相は介入を認めず
- 植田会見は「2%を超えて上振れするリスク」「利上げペースを早めることもありうる」と、ウォーシュの沈黙とは対照的に踏み込んだ。日銀の独立性も明言
- それでも円は160円88銭まで下落。日米金利差が変わらない限り、介入も口先タカ派も効果は一時的
今週、世界で一番エラい人たちが集まって、出した結論は「金利は、今は動かさない」だった。FRBも、日銀も。そのうえで日本は、真夜中に数兆円を投げて円を買い、総裁は「いつか利上げを早めるかも」と匂わせた。
言葉を尽くし、札束を投げ、それでも——通貨だけは、誰の言うことも聞かず、金利差の方へ勝手に流れていったの。
結局いつもそうなのよ。エラい人たちが会議室で言葉を選び、真夜中に大金を動かしてる間も、あたしたちの財布の中身は、たった一つの数字——金利差——が静かに決めていく。だからせめて、その仕組みだけは分かっておきましょ。振り回されるなら、せめて理由くらいは分かっていたいでしょ。
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
Policy stood still. Money didn’t.
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※本記事はブルームバーグ、時事通信、日本経済新聞、読売新聞等の公開情報をもとに構成しています。


