今週、為替の世界で大事件が起きたわ。
40年ぶりの円安水準(1ドル=163円台後半)まで売られていた円が、週の終わりには157円台まで戻したの。その差、約6円。ドル円で6円って、かなり大きな動きよ。
で、多くの人が思うわけ。「あ、政府が介入したから円高になったのね」って。7月30日の深夜に、政府・日銀が円買い介入をやったから。
これ、半分は正解。でも半分は間違いなの。
世の中って、「きっかけ」と「原因」を混同しがちなのよね。マッチを擦った人が火事を起こしたように見える。でも、本当に燃えた理由は、その家が乾ききっていたからかもしれない。
今週の円も、まさにそれだった。
介入は確かに引き金を引いた。でも、6円分の円高を全部介入が作ったわけじゃないの。本当の主役は、別にいた。今日はこの「円が戻った本当の理由」を、順番にほどいていくわよ。昨日までの一週間の総決算ね。
おさらい:今週、円に何が起きたか
まず時系列を整理するわね。今週の円は、ジェットコースターだったの。
- 先週:40年ぶりの円安水準、163円台後半まで下落
- 7月30日深夜:政府・日銀が円買い介入とみられる動き。10分で157円98銭まで急騰
- 7月31日夕方:160円88銭まで戻す(=介入の効果、いったん剥落)
- 8月1日:再び157円台前半まで円高が進行
昨日あたしが書いた記事は、7月31日の「160円台に戻った」時点で締めてたの。「介入しても円は戻った、効果は一時的」ってね。
ところが、その後さらに円高が進んだ。「あれ?介入、実はじわじわ効いてる?」と見える展開になったのよ。でも——ファクトを掘ると、話しはもう少し複雑だったの。
本当の理由その1:円は「売られすぎ」ていた
一番大事なのがこれ。
介入の前、円はとんでもなく売られすぎの状態だったの。
どういうことか。為替市場には「投機筋」と呼ばれる、短期で売買して利ざやを狙うプレイヤーがいるの。彼らはこの数ヶ月、「円はまだまだ下がる」と見て、円を売る賭け(円ショート)を大量に積み上げてたの。シカゴの通貨先物市場のデータでは、この円売りポジションが相当な規模まで膨らんでた。
これ、何を意味するか。みんなが同じ方向(円売り)に賭けすぎると、逆に危うくなるの。全員が「円は下がる」に張ってる状態は、裏を返せば「もう新しく円を売る人が少ない=下げる燃料切れ」でもあるのよ。
キャンプファイヤーを想像して。
マッチ一本だけじゃ、大きな炎にはならない。でも、目の前に乾いた薪が山積みになっていたら話しは別。その小さな火種が、一気に炎を広げていく。
円売りも同じ。介入が火をつけたんじゃない。火が燃え広がるだけの状態を、市場がもう自分で作っていたの。
本当の理由その2:介入は「小突き」だった
そこに、介入がきたの。
介入自体の金額(おそらく数兆円)で6円分の円高を作ったわけじゃないの。介入の本当の役割は、「積み上がった円売りに、最初の火種を放り込むこと」だったの。
政府が円を買い始めた瞬間、円売りに賭けてた投機筋が青ざめる。「やばい、当局が本気で円安を止めにきた。このまま円売りを続けたら、踏み上げられて大損する」。そう思った彼らが、慌てて円売りの賭けを手仕舞い始めるの。円売りを手仕舞うって、つまり円を買い戻すことよ。
誰も「円が好きになった」わけじゃない。損したくない。それだけ。相場って、案外ロマンじゃなくて、保身で動くのよ。
これが連鎖するの。一人が買い戻すと円が上がる。円が上がると、次の投機筋も「まずい」と買い戻す。また上がる。また買い戻す——雪崩みたいに円買いが広がるの。これを「踏み上げ」とか「ショートカバー」って言うわ。
だから6円の円高は、介入が作ったんじゃなくて、介入がきっかけで投機筋が自分で作ったの。当局はマッチを一本擦っただけ。あとは、乾いた薪(売られすぎた円売り)が勝手に燃え広がった。火をつけたのは介入だけど、燃えたのは元々そこに積み上がってた薪なのよ。
本当の理由その3:アメリカの雇用も少し陰り
もう一つ、地味だけど効いた要素があるわ。
円安の大元の原因は、日米の金利差だったわよね。アメリカの金利が高いから、みんなドルを買って円を売る。この金利差が縮まらない限り、円安は止まらない——これがずっとの構図だった。
ところが最近、アメリカの雇用に、ちょっと陰りが見え始めてるの。直近の米雇用統計では、新規雇用の伸びが市場予想を下回り、過去分も下方修正された。失業率自体は安定してるけど、「雇用市場は、見た目ほど強くないかも」という見方が出てきた。
もちろん、「景気後退だ!」と言うにはまだ早い。めいびー。でも、市場は「もしかして?」だけでも十分反応するの。
雇用が弱れば、「FRBはそんなに利上げできないかも」となって、ドルが少し売られやすくなる。これも、円買い戻しを後押しした一因なの。
つまり今週の円高は、①売られすぎの反動+②介入という小突き+③米雇用の陰り、この3つが重なって起きた合わせ技だったの。介入”だけ”じゃない。ここが、多くの人が見落とすポイントよ。
じゃあ、円安は終わったの?
ここが一番聞きたいところよね。正直に言うわ。まだ分からない。でも「終わった」と決めつけるのは早い。
理由はシンプル。日米の金利差が、まだ大きいままだから。アメリカは3.50〜3.75%、日本は1.0%。この差が埋まらない限り、円を売ってドルを持つ動機は消えない。今回の6円の円高は、あくまで「売られすぎの反動」であって、「金利差が縮まった」わけじゃないの。
実際、市場ではこんな見方が出てるわ。
- 介入の2発目への警戒:過去には複数回に分けて介入した例も多く、市場では「2回目があるかもしれない」と警戒する声も出ている
- でも戻り売りも:一方で、円が戻ったところで「また円を売ろう」と待ち構えてる勢力もいる。だから上(円安方向)も簡単には行きにくい
- 来週の山は8月7日:次回の米雇用統計(8月7日予定)がここ。ここで雇用がさらに弱ければ円高方向、強ければ円安方向に、大きく振れる可能性がある
あたしたちはどう見ればいいの?
いつも通り、正直に言うわ。今週の6円の円高で、あなたの生活がすぐ楽になるわけじゃない。輸入物価はまだ高いままだし、6円戻したくらいでスーパーの値札がすぐ下がるわけでもない。
でも、押さえておくことは3つ。
① 「介入で円高=もう安心」ではない
今回の円高は、売られすぎの反動が大きい。金利差という根本が変わってない以上、また円安に振れ直す可能性は十分ある。一度の円高で「トレンド転換だ」と飛びつかないこと。
② 円は”売られすぎ”も”買われすぎ”も反動が来る
今回学んだ通り、みんなが同じ方向に賭けすぎると、いつか反動が来る。今は円売りの反動(円高)がきてる。でもこれが行きすぎれば、今度は逆の反動もありうる。極端は続かない、と覚えておいて。
③ 次回の米雇用統計(8月7日予定)に注目
今週の中銀ウィークの、次の”答え合わせ”がここ。アメリカの雇用がさらに弱れば、円高の流れが続くかもしれない。逆なら円安に逆戻り。カレンダーに8月7日、ね。
今週のまとめ
- 40年ぶり安値(163円台後半)まで売られた円が、週末に157円台まで約6円戻した
- 直接のきっかけは7月30日深夜の円買い介入。ただし6円全部を介入が作ったわけではない
- 本当の主役は「売られすぎの反動」。積み上がった投機筋の円売りポジションが、介入をきっかけに一斉に買い戻された(踏み上げ)
- さらに米雇用の弱含みも円買いを後押し。①反動+②介入+③米雇用の陰りの合わせ技
- ただし日米金利差は依然大きく、円安トレンドの終了とは言い切れない。市場は介入2発目と、8月7日の米雇用統計を警戒
今週、当局は数兆円を投げて円を買った。でも、6円の円高を本当に作ったのは、当局じゃなかった。“もう円を売りすぎた”と気づいた市場自身だったの。
介入って、実は魔法じゃないの。乾いた枯れ草がなければ、マッチ一本擦っても何も燃えない。逆に、枯れ草がたっぷり積もってれば、小さな火種で山全体が燃える。今週燃えたのは、40年分溜まった「円売られすぎ」という枯れ草だったのよ。
考えてみると、介入って「市場と戦った」わけじゃないの。市場に向かって、「ほんとに、その賭け続ける?」と聞いただけ。
そして市場は、「…やっぱやめる。」と答えた。
それだけのことだったのよ。
だから、次に「介入で円高!」というニュースを見たら、こう考えてみて。火をつけたのは誰か、じゃなくて、そこに燃えるものがあったか。相場を動かすのは、いつだって、たまりにたまった誰かの思惑なの。
市場は、毎日誰かが勝って、毎日誰かが負ける。でも、その波に毎回乗る必要はないの。
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
Markets don’t burn because of one spark. They burn because everything was already dry.
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※本記事はブルームバーグ、外為どっとコム、ソニー銀行等の公開情報をもとに構成しています。


