ちょっと前まで「原油200ドル説」で世界が震えてたの、覚えてる?
あれからわずか数カ月。この週末に出てきたニュースは、真逆の心配だったのよ。
「原油、余るかもしれない」。
ほんの数カ月前まで「ガソリン代どうなるの!?」って震えてたのに、今度は「タンク足りる?」ですって。市場って本当に情緒が忙しいのよ。
市場の手のひら返しの早さは天下一品だけど、原油市場も負けてないわ。
「足りない!」って備蓄をかき集めてた世界が、気づけば「置き場所どうしよう」って顔をし始めてる。トイレットペーパー騒動の後の、物置の山と同じ構図ね。
人類ってね、「なくなる!」には全力疾走するのに、「余った」は見なかったことにする生き物なのよ。
この週末に出てきた3つのニュース
まず事実を並べるわ。
- OPEC+が小幅増産を承認:石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくるOPEC+の有志国は5日の会合で、8月分の生産枠の小幅な拡大を承認したの(ブルームバーグ)。事前のロイター報道では、引き上げ幅は6月・7月と同じ日量約18万8000バレルとされてたわ。有志国は4月から7月にかけて、生産枠を合計で日量約80万バレル引き上げてきてる
- 「供給過剰」懸念が再燃:ブルームバーグは5日、「わずか数カ月で状況一変、原油の供給過剰懸念が再燃」と報道。市場に弱気心理が広がってるの
- イランが「通航料」で中国優遇を示唆:イランの駐中国大使が、ホルムズ海峡の通航料について「中国を含む友好国には特別な配慮」をすると発言したと報じられたわ
3つ目、さらっと書いたけどすごい話しよ。戦場だった海峡が、料金所になろうとしてるの。もうね、ETC付ければ割引になる世界なのかと思ったわ。
これは後でじっくりやるわね。
「足りない」から「余る」へ——4カ月の往復
時系列で振り返ると、この相場の往復ぶりがよく分かるわ。
市場って、「一生あなたしかいない」って言ってた翌週には新しい恋人見つけてるタイプなのよ。
2月27日にイラン戦争が始まって、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に。世界の海上輸送原油の約3分の1が通るこの海峡が詰まって、4月末にはブレント原油が1バレル111ドル台まで急騰。「次は200ドル」って声が本気で語られてたのよね。
ところが。停戦と交渉決裂を行き来した末に、6月14日、イランと米国は「戦争終結の了解覚書」で合意したと発表(全戦線での戦闘の即時終結と海上封鎖の解除)。19日に予定されてた対面での正式署名は実現しなかったけど、トランプ大統領がG7の場で事前に草案へ署名していて、電子署名の形で発効——と思ったらその2日後に再封鎖のヒヤリ。それでも、そこからホルムズの通航はじわじわ回復してきたの。直近ではホルムズ海峡を通る原油は日量1000万バレルを超えて、サウジアラビアの輸出は戦前の約9割まで戻ってきたの(トレーディングエコノミクス、7月2日時点)。
結果、ブレント原油は今や71ドル前後。
開戦前(2月27日以前)の水準まで、ほぼ丸ごと往復したのよ。111ドルからざっくり4割弱の下落。エレベーターで最上階まで行って、そのまま1階に戻ってきた感じね。ただ今回の往復は、文句を言う筋合いのものじゃないわ。最上階の「景色」の正体は戦争プレミアムだったんだから、1階に戻ってこられたこと自体が何よりの朗報なのよ。
そこにOPEC+の増産が重なる。ただし、ここは冷静に見てほしいの。
生産枠の引き上げは日量18万バレル台の「小幅」で、しかも戦争の影響でOPEC+の実際の生産量は2月の日量4277万バレルから5月には3313万バレルまで落ち込んでた(OPECデータ、ロイター報道)。
つまり枠を広げる話しより、壊れた生産が戻ってくる話しのほうがずっと大きいのよ。
市場が見てるのは増産発表の数字じゃなくて、「中東の蛇口が全部戻ったら、そこにUAEの自由増産まで乗るんでしょ?」っていう先の絵なの。
そう、UAE。5月1日付でOPECを電撃脱退した、日本の最大の原油調達先。カルテルの生産枠から自由になった同国は、すでに輸出を日量390万バレル超まで回復させてるわ。供給過剰懸念の裏には、この「枠の外の巨人」の存在があるの。
OPECのルールブックを閉じて、「じゃ、私は自由参加で」って席を立った子に限って、たっぷり石油を持ってるんだから話しがややこしいのよ。
ちなみに需要側にも、世界景気の減速を映して見通しを引き下げる動きが出てる。供給は戻る、需要は怪しい。飲み会なのに料理だけ次々届いて、肝心のお客さんが来ない状態ね。それが「余る心配」の中身よ。
ただし両論も並べておくわ。米国の原油在庫は取り崩しが続いて低水準だし、和平交渉そのものはまだ完了してない(カタールなどの仲介で継続中)。テヘランは海峡の海上支配を主張してて、中東発のニュース一本で価格が跳ね返るリスクは消えてないの。
「余る」はまだ懸念であって、確定じゃないわ。
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戦場から料金所へ——イランの新ビジネス
さて、3つ目のニュース。イランの駐中国大使いわく、ホルムズ海峡の通航料は「中国を含む友好国には特別な配慮」。
整理すると、イランは戦争でホルムズを封鎖して「通さない」を交渉カードにしてた。戦争が終わった今度は、「通してあげるから料金ね」に切り替えようとしてるように見えるの。しかも友好国は割引。敵と味方で値段が違う高速道路なんて、聞いたことある?ダイナミックプライシングにもほどがあるわ。
実はこの構想、突然出てきたものじゃないわ。湾岸協力会議(GCC)は4月末の時点で、イランによる「安全航行のための通行料徴収」に警告を発してた(AP通信)。つまり周辺国は前から警戒してたのよ。
国際法上、ホルムズ海峡のような国際海峡の通航に一方的に課金することへの正当性は当然争われるでしょうし、これが定着するのか、単なる交渉カードなのかはまだ分からない。
でもひとつ確実なのは、「誰が海峡を支配するか」の勝負が、軍事から経済に衣替えして続いてるってこと。戦争は終わっても、海峡の値段は終わってないの。
日本への影響
さて、あたしたちの財布の話し。
ガソリン・電気代:追い風、ただし時差あり
原油が開戦前の水準まで下がったのは、素直に家計への追い風よ。
ガソリンや灯油の店頭価格は、原油価格の動きが数週間遅れで反映されやすいし、電気・ガス料金の燃料費調整は数カ月遅れでついてくる仕組み。
戦争中の高値仕入れ分が抜けていけば、負担感は和らぐ方向ね。とはいえ、「原油下がったら今日から10円安!」なんて甘い話しじゃないの。
世の中そんなに親切なら、あたしももっと人生イージーモードだったわ。
「いつ、いくら下がる」は為替にも左右されるわ。ドル円がまだ160円前後の円安圏にいる以上、原油のドル建て価格が下がっても、円建ての輸入コストの下がり方は目減りする。
原油は頑張って下がってるのに、円が「いや、私は協力しません」って言ってるの。
原油安と円安の綱引きは続くのよ。それにガソリン補助金みたいな政策要因でも店頭価格は動くから、「原油が下がった分だけ安くなる」と単純には行かないの。
ニュースの原油価格と給油所の値札の間には、為替と政策と時差、3つのフィルターが挟まってるのよ。
「通航料」という新しい上乗せ候補
ここが今日いちばん日本に効く論点。日本は原油の9割以上を中東に頼ってて、その大半がホルムズ海峡を通ってくる。もしイランの通航料が現実に定着したら、それは輸送コストとして輸入価格に乗ってくる可能性があるの。
しかも「友好国には配慮」ってことは、国によって値段が変わる世界。
日本がどう扱われるかは現時点でまったく分からないわ。
米国と歩調を合わせる日本の立ち位置を考えると、少なくとも「中国と同じ割引率」を期待できる保証はない。エネルギーの値段に外交の距離感が反映される——そういう嫌な時代の入り口かもしれないの。
ガソリン価格まで人間関係で決まる時代。もう会社の飲み会だけで十分なのに。
もちろん、金額次第では影響が軽微で済む可能性もあるし、国際的な反発でそもそも実現しない可能性もある。ただ「輸送ルートの値段が政治で決まるかもしれない」という宿題を突きつけられたこと自体が、エネルギーを輸入に頼る国には十分重い話しなのよ。
UAEがOPECの外にいる意味
日本の最大調達先UAEが、生産枠の縛りなしに増産できる立場になった。
調達の量って意味では安心材料よ。UAEはホルムズを迂回できるパイプラインも持ってるから、海峡リスクへの保険にもなる。保険ってね、入ってる時はありがたみゼロ。でも事故が起きた瞬間に神様になるのよ。
一方で、カルテルの外で産油国同士のシェア争いが激しくなれば、原油価格の乱高下は起きやすくなる。安いことと安定してることは別物なの。ガソリンが安くなって喜んでたら、産油国の財政が荒れて中東がまた不安定化——なんてループは、この4カ月で見たばかりでしょ。
まとめ:値段は往復したけど海峡は元に戻ってない
原油価格だけ見れば、戦争前に戻ったわ。でも中身は別物よ。UAEはOPECの外にいて、イランは海峡の入り口で料金表を書いてる。値段が同じでも、その値段を支える世界の配管は組み変わってるの。
「安くなった、やった」で終わらせないで。なぜ安いのかまで見ておくと、次に高くなる時、慌てなくて済むから。
ニュースは毎日変わる。でも、家計簿は嘘をつかない。それだけは覚えて帰って。
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
Cheap oil, expensive geography.
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※本記事はブルームバーグ、ロイター、日本経済新聞、AP通信等の公開情報をもとに構成しています。


