FOMC議事録は「家族げんか」の記録だった|AIをインフレの犯人と名指し、円安162円に飛び火

バーガンディーとチャコールを基調に、長い会議テーブルを挟んで左右に分かれた椅子の列と、中央に置かれた一通の白い封筒を描いた明るい油彩風イラスト。真っ二つに割れた委員会と雇用ショック前に書かれたFOMC議事録を象徴する記事サムネイル画像。 経済

今朝3時(日本時間)、FRBが6月16・17日開催分のFOMC議事録を公開したわ。

議事録って普段は、会社でいう「会議の議事メモ」みたいなものよ。誰も読まないのに、なぜか毎回ちゃんと作る、あの子。声明文と記者会見で市場は答え合わせを済ませてるから、3週間遅れの議事録は「そうでしたね」で終わることが多い。

でも今回は違うのよ。

主役級の理由が3つある。

①委員会が真っ二つに割れてること

②この文書が雇用統計ショックの「前」に書かれたタイムカプセルであること

③FRBがAIをインフレの犯人として名指ししたこと。

順番にいくわよ。

中身その1:議長いわく「家族げんか」

まず分裂の構図から。議事録によると、年末時点の適切な政策金利について——

  • 多くの参加者:「現在の誘導目標レンジ内か、やや下」が適切
  • 別の多くの参加者:「現在のレンジより上」が適切

つまり「下げたい組」と「上げたい組」が、ほぼ同じ厚さで同居してるの。数名の委員は6月の時点で「利上げすべき」とまで主張してた(最終的には据え置きに賛成したけど、インフレが悪い方向に進めば追加引き締めが正当になる、との条件付きでね)。

ウォーシュ議長自身、この状態を「家族げんか」って呼んだと報じられてるわ。

会議の中身を家族げんかって表現する議長、率直すぎて嫌いじゃないけど、世界経済がその食卓に同席してるのよね。

ただね、普通の家庭なら夕飯のあとに仲直りするけど、この家族がケンカすると世界中の住宅ローン金利まで巻き込まれるのよ。スケール感がおかしい。

基調はインフレ警戒。参加者の多数は「インフレ率が数年にわたって2%を超え続けたことで、インフレ期待や賃金・価格設定の行動に影響が出始めかねない」と懸念して、物価リスクは上向きと判断。声明文から利下げ寄りの文言を削除することを大半が支持して、あの130語の最短声明につながったの。

削れるところまで削った結果、「よろしくお願いします。」しか書いてない退職メールみたいな潔さだったわ。

そしてウォーシュ流の情報統制も健在よ。

議長はドットチャート不参加、フォワードガイダンスも廃止。だから議事録が委員会の本音を覗ける唯一の窓だったんだけど——その議事録すら「今後の政策は入ってくる情報次第」と、そっけないの。

カーテンを開けたら、もう一枚カーテン。ロシアのマトリョーシカかと思ったわ。

中身その2:この文書、雇用ショックの「前」に書かれてる

ここが今日いちばん頭の整理が要るところ。この議事録は6月17日の会議の記録——つまり、先週の雇用統計ショック(6月の雇用者数5.7万人増、予想の半分、過去分7.4万人下方修正)が出る前の世界で書かれた文書なの。

当時のFRBが見てた景色では、5月の雇用は17.2万人増でまだ堅調だった。18人中9人が年内利上げを見込むドットを打ったのも、その景色の中での話しよ。

ところが文書が公開された今、市場はすでに弱い雇用でハト方向に織り込み直してる。

タカ派の手紙が、ハト派になった世界に配達された——このズレが今回の議事録の正体なの。送り主は6月。届いた先は7月。市場だけ時差ボケしてる。

市場の織り込みで見ると分かりやすいわ。9月利上げの確率は、雇用統計前が約66%→統計後に50%台へ低下→議事録公表後は6割弱(CMEフェドウォッチ、8日時点)。

市場って結局、「昨日まで絶対そう言ってたじゃん。」を毎日更新する生き物なのよ。

議事録自体はタカ派だったのに、市場の反応は限定的——株価指数先物は小幅マイナス圏のまま、米長期金利はやや上昇、という程度だったの。「古い地図」だと分かって読んでるからよ。

ただし、古い地図にも委員たちの体温は写ってる。「弱い雇用を1回見たくらいでは、この面子は簡単にハトにならない」——それが読み取れるだけでも、この文書には価値があるわ。

次の審判は7月14日の米CPI。そこで家族げんかの形勢が決まるの。

中身その3:FRB、AIを「インフレの犯人」と名指し

さて、今日あたしが一番引っかかったのはここ。議事録にこう書かれてるの——

  • 多くの参加者が「AIインフラへの旺盛な需要が、テック製品と電気料金への上昇圧力を維持する可能性が高い」と指摘
  • FRBスタッフは、コア財インフレの上昇について「関税とAI関連の価格圧力」を主因の一部と判断

中央銀行の公式記録に、AIが物価押し上げの要因として書き込まれたのよ。株式市場では「AIはバブルか」って論争をしてるけど、FRBの会議室では「AIはインフレか」って論争が始まってた。

AI、最近なんでも犯人扱いされるのよね。そのうち「昨日プリン食べたの誰?」「AIです。」くらいになりそう。

データセンターの建設ラッシュが半導体や電力設備の値段を吊り上げて、それが電気料金に乗る——マイクロソフトが人を減らしながらAIに25億ドル投じてる話しを先日書いたけど、その投資ブームの請求書が物価の側から回ってきた形ね。

一方でフェアに書くと、一部の委員は「AIの生産性向上がいずれ供給力を高めて、物価を押し下げる方向に働く」とも指摘してる。これはウォーシュ議長の持論と同じ側の見方よ。つまりAIは、短期ではインフレ要因、長期ではデフレ要因(かもしれない)という二重人格として、金融政策の方程式に正式に組み込まれたの。要するに、AIは「若い頃は浪費家だけど、将来ちゃんと稼ぐ子かもしれません」って評価されてるわけ。

日本への影響

さて、あたしたちの足元。今日は特に財布に近いわよ。

ドル円162円:家族げんかのツケは円が払ってる

議事録が「利上げ観測は消えてない」ことを裏書きした一方で、昨日はトランプ大統領の「イスラマバード覚書は終わったと思う」発言で有事のドル買いが走って、ドル円は一時162円56銭まで上昇。今月1日につけた1986年12月以来、約39年半ぶりの高値162円84銭が目の前よ。

構図を整理するとね。米国は「利上げするかも」、日本の政策金利は1%——日米金利差が開いたままの限り、円を売ってドルを持つ側が有利という基本構造が変わらないの。円が弱いというより、ドルがジム通いしすぎなのよ。

そこに中東の有事ドル買いが乗った。市場では円買い介入への警戒も高まってて、「不意打ち介入」を意識した神経質な値動きが続いてるわ。為替ディーラー全員、スマホの通知音にビクッとしてる頃ね。

介入は当局の判断だから予想はしないけど、162円台って水準は、4月に介入があった頃よりさらに上だってことだけは覚えておいて。それと、海外旅行や外貨建ての買い物を考えてる人は、この水準が「一時的な円安」なのか「新しい平常」なのか、まだ誰にも断定できない段階だってことも頭に置いておいてね。

東京市場:3日続落のあとの消化試合

昨日の日経平均は1437円安の3日続落で、6万7000円を割り込んだの。投資家のメンタルも、日経平均と一緒に3営業日続落。中東再燃と円安、それにAI・半導体の調整が重なった売りね。

今日はこの議事録と中東情勢を消化する日——寄り付きから、金利に敏感なグロース株と、原油高が追い風の資源株で明暗が分かれやすい地合いよ。

3日で1437円下げた後だから自律反発があってもおかしくないけど、反発の有無より「何が買われて何が売られるか」の中身を見るほうが、今の相場の体温は正確に測れるわ。

家計:円安×原油×「AIの電気代」の三重奏

家計への経路は三本立てになってきたわ。

①円安162円台は輸入物価をじわじわ押し上げる

②原油は74ドル台へ再上昇(先週の「余る心配」から一週間でこれよ)

③今回新しく見えたのがAIと電気代の関係。

「ChatGPT便利〜♪」の裏側で、発電所は残業してるのよ。米国の話しに聞こえるけど、データセンター建設ラッシュと電力需要の急増は日本でも同じ構造で進んでる。FRBの議事録が、回り回ってあなたの電気代の話しをしてる——大げさじゃなく、そういう時代に入ったのよ。

まとめ:手紙は古い、でも差出人はまだ怒ってる

今日の議事録は、雇用ショック前に書かれた古い手紙よ。でも差出人(FRBのタカ派たち)がインフレにまだ怒ってることは、はっきり読み取れた。弱い雇用1回で宗旨変えする人たちじゃない。次の手紙——7月14日のCPI——で、家族げんかはどっちかに傾くわ。

それまであたしたちができるのは、円安と原油と電気代という既に届いてる請求書を直視しておくこと。FRBの結論を待たずに、家計の防御は今日から始められるんだから。

FRBは制御できない。トランプも制御できない。為替も制御できない。でも、家計簿だけは今日から制御できる。……そこだけは、まだあたしたちのホームゲームよ。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

The Fed fights. The yen pays.


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※本記事はFRB公表資料、CNBC、ブルームバーグ、日本経済新聞等の公開情報をもとに構成しています。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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