40年ぶり、って言われても、ピンとこないでしょ。
40年前は1985年。バブルが始まる前で、携帯電話もインターネットもなくて、あたしたちの多くはまだ生まれてないか、ランドセルを背負ってた頃よ。その時代以来の水準まで、円が安くなったの。
2026年7月22日、東京の外国為替市場で、ドル円が一時163円台前半をつけた。円は約40年ぶりの安値を更新したのよ。年初は148円台だったから、半年ちょっとで約15円も円安が進んだことになるわ。
「15円くらい、いいじゃない」と思った?
それがね、あなたの財布に、じわじわ効いてくるの。今日はその話しをするわね。
そもそも、なんで円は安くなってるの?
円安の理由って、いつも「これ一つ」じゃないの。今日の円安は、3本の糸が同時に引っ張られて起きてるのよ。順番に、噛み砕くわ。
糸①:原油が上がってる
中東情勢がまた緊迫してて、原油価格が上昇してるの。ブレント原油は1バレル92ドルに迫ってるわ。日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼ってるでしょ。原油が上がると、日本は「もっとドルを払って石油を買わなきゃ」となる。ドルをたくさん買う=円を売ることだから、円安が進むのよ。
糸②:日米の金利差
アメリカの金利が高いままなの。金利が高い国にお金を置いておくと、利子がたくさんつくでしょ。だから世界のお金は「円で持つより、ドルで持つほうが得」と考える。みんながドルを選んで円を手放すから、円が安くなる。これがずっと続いてる、いちばん根っこの理由ね。
糸③:政局の不安
先週の参院選で、与党が過半数を割ったの。この結果そのものの善し悪しは、あたしは評価しないわ。でも市場は冷たく計算するの。「政治が不安定だと、財政を派手に使う政策や、金融緩和を続ける流れになりやすい」と読んで、それも円安の材料にした。政治の話しは横に置くとして、市場がそう解釈したという事実だけ、押さえておけばいいわ。
この3本が同時に引っ張ったから、円は40年ぶりの安値まで滑り落ちた、というわけ。
円が「タダ同然で借りられる通貨」になってる
ここからが、今日いちばん見てほしいところよ。
今、世界の投資家の間で「キャリートレード」というのが数十年ぶりの高水準になってるの。言葉は難しそうだけど、仕組みはシンプルよ。
金利の安い円を借りて、金利の高い国の資産で運用するの。円は金利がほぼゼロだから、借りてもコストがほとんどかからない。タダ同然。その円をドルに換えて、アメリカの高金利の債券で稼ぐ。差額が丸ごと儲けになる、というカラクリね。
……これ、円の立場になって考えると、なかなか切ないのよ。
かつて円は「安全資産」だったの。世界が荒れると、みんなが「とりあえず円を持っておけば安心」と買いにくる、頼れる通貨だった。それが今や、「金利が安いから、借りるのにちょうどいい」という理由で選ばれてる。頼られてるんじゃなくて、都合よく使われてるの。
例えるなら、昔は「困ったときに相談できる頼れる友達」だったのに、今は「タダで車を貸してくれる便利な知り合い」になってる感じ。円、ちょっと扱いが軽くなってきてるのよね。
しかもタチが悪いことに、このキャリートレードは巻き戻る時が怖いの。何かのきっかけで急に円高に振れると、借りてた円を慌てて返す動きが一斉に起きて、相場が乱高下する。みんなで「円は安いまま」に賭けてる時ほど、そのバランスが崩れた時の揺れが大きくなるの。静かな水面ほど、石を投げた時の波紋が大きい、ってわけ。
財務省 vs 市場のにらみ合い
こういう時、必ず登場する人がいるの。財務省の、通貨政策の責任者よ。
今回も神田財務官が記者団に「投機的な動きには断固たる措置を取る」と牽制したわ。これはつまり「あんまり調子に乗って円を売ると、介入するわよ」という警告ね。
「介入」というのは、政府と日銀が市場に直接お金を突っ込んで、為替の流れを変えようとすること。円安を止めたい時は、持ってるドルを売って、円を買うの。日本の外貨準備は約1.2兆ドルあるから、弾は十分持ってるわ。
でもね、ここがポイント。市場は、この警告を半分ナメてるのよ。「どうせ口だけでしょ」って。実際、単独介入の効果は一時的なことが多いの。しかも介入は「今の相場が高いか安いか」じゃなくて「動きが急すぎるかどうか」で判断するとされてる。だからじわじわ進む円安には、意外と手を出しにくいの。
財務省は「やるぞ」と睨む。市場は「やれるものなら」と横目で見る。この睨み合いが、円相場の水面下でずっと続いてるってわけ。大人同士の、静かな根比べね。
日本への影響
さて、あなたの財布の話しよ。ここが本題ね。
円安は、あなたの生活費を静かに上げる
円安のいちばん分かりやすい影響は、輸入するものが高くなること。日本は食料もエネルギーも大量に輸入してるから、円が安くなると、その分だけ仕入れ値が上がって、最終的にあなたの支払いに乗ってくるの。
数字で見ると、けっこう効くわよ。ある試算では、ドル円が10円円安に進むと、標準的な家計の年間負担が数万円増えるとされてるの。今年はもう年初から15円進んでるでしょ。つまり、何もしてないのに、家計の負担がじわっと増えてるってこと。
しかも厄介なのが、電気・ガス料金は数カ月遅れて効いてくること。今日の円安と原油高は、すぐには請求書に出ないの。数カ月後、じわっと上がる。「なんか最近、光熱費高くない?」の答えが、実は今日のニュースにある、ってわけ。
全てが損というわけでもない
ただ、円安は「一方的に悪」でもないの。ここは公平に見ておくわね。
輸出企業にとっては、円安は追い風なの。自動車や電機みたいに、海外で稼ぐ会社は、円安だと儲けが増える。だから、あなたが新NISAで日本株や日経平均のインデックスを持ってるなら、その中の輸出企業の株は、円安で恩恵を受けてる可能性があるわ。
つまり円安は、あなたの財布の片方(生活費)を痛めながら、もう片方(投資)を潤してるかもしれないの。恩恵と負担が、人によって、産業によって、不均一に及ぶ。「円安は悪」とも「円安は善」とも、一言では言えないのよね。
で、どうすればいいか
あたしの結論は、いつもと同じ。パニックにならず、自分の足元を見ること。
為替は、プロでも読めないの。「介入で急に円高になるかも」「いや、まだまだ円安が続く」――専門家でも意見が割れてる。だから、あたしたち一般人が為替を予想して動くのは、ほぼギャンブルよ。
できることは、地味だけど確実なこと。輸入品の値上がりは、しばらく続くと覚悟して家計に織り込んでおく。投資は為替に一喜一憂せず、決めたペースで淡々と続ける。そして「円安は生活費と投資に逆向きに効く」という地図を頭に入れて、ニュースを眺める。それで十分よ。
慌てて外貨預金に飛びついたり、「円が終わる」と不安になって変な金融商品に手を出したりするのが、いちばん危ないの。相場が騒がしい時ほど、こっちは静かにしてるのが勝ちよ。
まとめ:軽く扱われても暮らしは続く
今日の話しをまとめるわね。
円が40年ぶりの安値、163円台をつけた。原油高、日米金利差、政局不安という3本の糸が同時に引っ張った結果よ。世界の投資家は円を「タダ同然で借りられる便利な通貨」として使い、財務省は「介入するぞ」と牽制する。その睨み合いの水面下で、あたしたちの輸入物価は、じわじわ上がっていく。
かつて「頼れる安全資産」だった円が、今は「安いから借りとこ」と軽く扱われてる。通貨にも、栄枯盛衰があるのね。国の通貨だって、人間関係と同じ。強い時はチヤホヤされて、弱ると足元を見られる。世知辛いわ。
でもね、そこで悲観して終わらないのが、あたしたちの強さよ。円が40年ぶりに安かろうと、今日もスーパーは開くし、あたしたちはご飯を作って、光熱費を払って、コツコツ積み立てを続ける。為替がどう動こうと、暮らしをちゃんと回していく人が、最後はいちばん強いの。円の価値は市場が決めるけど、あなたの生活の立て直し方は、あなたが決められるんだから。
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
The yen got cheap. Life didn’t.
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※本記事はロイター、ブルームバーグ、日本経済新聞の公開情報をもとに構成しています。


