AI株急落、アップルだけ上昇|「乗り遅れ」が勝ち組に? 円高と米国株投資への影響

夜明け前の静かな港町の高台に一軒だけ明かりの灯る落ち着いた家があり、眼下では巨大なデータセンター群の灯りが嵐の雨に揺れ、沖では避難する船が国債と円という名の港へ次々と集まる。AI株の急落とアップルへの資金逃避、円高を描いた映画的な絵画 市場

学生時代、クラスで流行っていたものに、一人だけのらない子がいなかった?

みんながルーズソックスを履いていても、その子だけは普通の靴下。みんながガラケーをデコっていても、その子のは素のまま。「ノリが悪い」「流行に乗り遅れてる」なんて、ちょっと陰で言われていたりして。

ところが数年後、写真を見返すと、一番まともに見えるのはその子なのよね。みんなで黒歴史を量産している間、一人だけ将来の自分に迷惑をかけなかったのよ。

10月22日のアメリカの株式市場で、まさにそんな逆転が起きた。

AIに巨額のお金をつぎ込んできた大手テック企業の株が軒並み売られるなか、一社だけ株価を上げた会社があった。少し前まで「AIに乗り遅れている」と言われていた、アップルよ。

何が起きたの?

10月22日、アメリカの株式市場では、AI関連の株に売りが広がった。

ハイテク株の多いナスダック総合指数は2.6%下落。S&P500も1.2%下がった。一方、ダウ平均はほぼ横ばいだった。

売られたのは、AIに関係する会社の株よ。

  • Meta(フェイスブックの親会社)は、決算の発表を受けて約7%下落
  • 半導体の製造装置をつくるラムリサーチは、決算のあと約12%下落
  • AI向けのクラウドを手がけるコアウィーブは約10%下落
  • テスラも、決算は予想を上回ったのに約3%下落

ただ、面白いのはここから。ナスダックの主要100社のうち、値上がりした会社は49社。ほぼ半分は上がっていたの。それでも指数が大きく下がったのは、AIと半導体の大型株が、下げ幅の9割以上を占めたからよ。

巨大なAI株が転んだせいで、指数まで巻き添え。クラスの人気者が欠席しただけで、学校全体が休校になったような騒ぎね。

背景にあるのは、AIへの巨額の投資が、本当に見合う利益を生むのかという不安。たとえばMetaは、2026年の設備投資を最大1,450億ドルと見込んでいる。売上は伸びているのに、稼いだお金が次々とデータセンターに消えていく。ロイターは、Metaの7〜9月期に、手元に残るお金(フリーキャッシュフロー)がマイナスになったと報じているわ。もはや会社というより、データセンターに仕送りする親よ。

例えるなら、高級レストランを開くために厨房へ全財産をつぎ込み、肝心のお客さんが何人来るのかはこれから考える。そんな商売、銀行の融資担当者なら白目をむくわよね。

さらに、中東の緊張で原油の値段も上がった。国際的な指標の北海ブレントは1バレル113ドル前後、アメリカの指標のWTIも一時100ドルを超え、5か月ぶりの高値になった。

AIの請求書だけでも頭が痛いのに、今度は原油まで値上がり。ウォール街の家計簿、もう赤ペンを入れる余白もないわ。

そんな中で、大手テック7社(マグニフィセント・セブン)のうち、アップルだけが1.2%上がって取引を終えた。

「乗り遅れた」が褒め言葉になった

アップルは、ほかの大手テック企業と比べて、AIのためのデータセンターにあまりお金を使っていない。

ヤフーファイナンスによると、アマゾン、グーグル、Meta、マイクロソフトの4社は、2026年の設備投資が合計で6,650億ドルを超える見通しだと示していた。一方、アップルの2026年の設備投資は、市場の予想で135億ドル程度。けたが一つ以上違うのよ。

ただし、設備投資が少ないことと、AIにお金を使っていないことは同じじゃない。アップルは、ほかの会社のAIと提携したり、研究開発にお金をかけたりしている。データセンターという「建物」への投資が少ない、ということね。

この慎重すぎるほどの財布の紐は、少し前まで弱点だと言われていた。」2025年、アップルはAIの新機能の展開が遅れ、ウォール街から「AIで何も動きがない」と厳しく見られていた。株価も、ほかの大手テック企業に後れをとっていた時期がある。

ところが今は、その評価がひっくり返っている。

AIに巨額のお金をつぎ込む会社が「本当に回収できるの?」と疑われ始めると、そこまでお金を使っていないアップルが「無駄遣いしない堅実な会社」に見えてくる。iPhoneという、すでに稼いでいる商品もある。

叩かれていた理由と、褒められている理由が、まったく同じ。

昨日まで「投資が足りない」。今日は「投資しすぎ」。ウォール街の採点基準、答案を提出したあとに変更されるのよ。

そして、この動きは今回が初めてじゃない。2月にも、AI関連の株が売られた日に、アップルだけが上がる場面があった。7月28日には、アップルの時価総額が取引時間中に一時5兆ドルを超えている。AI株が下がるとアップルが上がる、というシーソーのような動きが、何度もくり返されているの。

もちろん、アップルが「勝った」と決めつけるのは早い。AIで大きく出遅れれば、何年か先にそのツケが回ってくるかもしれない。今のアップルの上昇は、アップルが何か特別なことをしたからというより、AIの株から逃げたお金の、一時的な避難先になっている面もあるのよ。

流行に乗らなかった子が、いつまでも正解とは限らない。でも少なくとも今は、一番落ち着いて見える。

お金の逃げ先は国債と円

AI株から逃げたお金が向かったのは、アップルだけじゃなかった。

一つは、アメリカの国債。比較的安全とされる国債が買われて、10年国債の利回りは大きく下がり、5%前後まで低下した。報道によっては、5%を割り込んだとされている。先週は一時5.36%まで上がっていたから、かなり大きな動きよ。国債は、買われると値段が上がって、利回りは下がる仕組みなの。

もう一つが、円。不安が高まると、比較的安全とされる円が買われやすい。共同通信によると、ドル円は一時156円台まで円高に動いた。

株から逃げる。国債に逃げる。円に逃げる。

昨日までAIの未来を熱弁していた投資家たちが、今日は国債を抱きしめている。未来の革命より、今夜ぐっすり眠れることのほうが大事になったらしいわ。

日本のあたしたちへ

円高は半分良いニュース

円高が進むと、日本の暮らしにはいい面と悪い面の両方がある。

いい面は、輸入するものが安くなること。日本は、石油や天然ガス、食料の多くを海外から買っている。円の価値が上がれば、同じドルの値段のものを、より少ない円で買えるようになる。原油の値段が上がっている今、円高はガソリン代や電気代の上昇を少しやわらげるクッションになりうるわ。

悪い面は、輸出する企業にとっての逆風。自動車や電子部品のように海外で稼ぐ会社は、同じだけ売れても、円に換えたときの売上が目減りする。日本の株価には、マイナスに働きやすいの。

たとえ話をするなら、円高は、海外旅行に行く人にはうれしいけれど、海外で商売をしている人には頭が痛い。同じ天気でも、洗濯物を干す人とスキー場の人とでは、喜び方が違うのと同じね。

米国株を持つ人にはダブルパンチ

もう一つ、気をつけたいのが、アメリカの株や、米国株の投資信託を持っている人。新NISAでも、特定口座でも、iDeCoでも同じよ。投資信託なら、特に為替の影響をそのまま受ける「為替ヘッジなし」の商品の場合ね。

今回のような日には、二つのことが同時に起きる。アメリカの株価が下がる。そして、円高でドルの資産を円に換算したときの価値も下がる。

何もしていないのに、二方向から請求書が届く。新NISAで非課税にしていても、精神的ダメージまでは非課税にしてくれないのよ。

しかも皮肉なのは、「安全な避難先」として円が買われた結果、海外に投資している日本人の資産が目減りするということ。世界の投資家が円に逃げ込むほど、円で暮らすあたしたちの海外の資産は、円に換えると小さく見える。

避難所が混雑すると、もともとそこに住んでいる人の家まで、少し狭くなる感じね。

ただし、ここで慌てて売る必要はないわ。為替は上がったり下がったりをくり返すもの。それに、毎月積み立てている人にとっては、円高と株安の日は、同じ金額でいつもより多くの口数を買えるタイミングでもある。今日の評価額が下がる日は、明日の仕入れが安くなる日でもあるの。大事なのは、こういう日があることを、最初から知っておくことよ。

シーソーの反対側に何か乗せてある?

今回の相場から、あたしたちが学べることがある。

それは、自分の資産のシーソーの反対側に、何が乗っているかを確かめること。

AI関連の株ばかりを持っていると、AIへの不安が高まった日に、資産全体が一緒に沈む。でも、AIとはあまり関係のない会社の株や、債券、現金などもバランスよく持っていれば、どこかが下がった日に、どこかが支えてくれるかもしれない。

全部をAIに賭けると、AIが咳をした日に全身が風邪をひく。

もちろん、分散していても、すべてが同時に下がる日はある。それでも、投資の世界の「乗り遅れ」は、ときどき最高の保険になる。流行りに全部を乗せず、少しだけ反対側にも重りを置いておく。それが、AIの相場が荒れる時代の、地味だけど現実的な守り方よ。

今日のまとめ

  • 10月22日、AIへの投資が回収できるのかという不安から、ナスダックは2.6%下落。ただ下げの9割以上はAIと半導体の大型株によるもので、市場全体の総崩れではなかった
  • その中でアップルだけが上昇。データセンターへの投資が少ないことが、かつての弱点から、今は「堅実さ」として評価されている
  • お金はアメリカの国債と円にも逃げ、10年国債の利回りは5%前後まで低下、ドル円は一時156円台まで円高に動いた
  • 円高は輸入物価には追い風だが、為替ヘッジなしの米国株を持つ人には株安と円高のダブルパンチ。積立なら安く買えるタイミングでもある。自分の資産のシーソーの反対側に、何が乗っているかを確かめたい

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

Sometimes the one who missed the party is the only one without a hangover.


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※本記事は、investingLive、ヤフーファイナンス、Stocktitan、The Next Web、ロイター、共同通信、日本銀行の公表データなどをもとに構成しています。株価の数値は2026年10月22日(米国時間)の終値時点のものです。原油価格は米国の取引終了前後の水準です。米10年国債の利回りは、データの取得時点によって約4.95%〜5.08%と数字に幅があります。アップルの設備投資の数字は市場予想で、実際の金額とは異なる可能性があります。情報は2026年10月23日時点のものです。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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