カメラを”捨てた”スマートグラスに中国の1兆円|スマホの次の箱、意外な本命

チャコールとマスタードを基調に、レンズに緑色の情報表示が浮かぶ無地のスマートグラスを正面から描いた明るくシネマティックな油彩風イラスト。カメラを載せない設計で1兆円企業となったスマートグラスと次の箱争いを象徴する記事サムネイル画像。 テック

「スマホの次の箱は誰が握るか」って話しを、アップル対OpenAIの訴訟で書いたわよね。その”次の箱”レースに、今日は意外な伏兵の話しを持ってきたわ。

シリコンバレーだけ見てると、「世界の未来はカリフォルニアで決まります」って錯覚するじゃない? ……ところがどっこい、深圳だったのよ。

主役は「Even Realities(イーブン・リアリティーズ)」という深圳のスタートアップ。7月6日、中国の巨大テック美団(メイトゥアン)とテンセントが主導する1.5億ドル(約240億円)の調達で、評価額10億ドル=ユニコーン入りしたの。創業わずか3年よ。

あたしなんて3年前、まだ「今日は何食べよう」で人生の意思決定してたわ。

でもね、この会社が面白いのは金額じゃないの。みんながカメラを載せる時代に、あえてカメラを載せないメガネで1兆円企業になった——この逆張りに、次の箱の本質が詰まってるのよ。

流行に逆らうって、だいたい失敗するか革命になるかのどっちかなのよね。中間はあんまりない。

メタが「全部撮る」なら、この会社は「何も撮らない」

まず構図を整理するわね。今スマートグラス市場を圧倒的にリードしてるのは、メタのRay-Ban(レイバン)。市場シェアは約7割で、カメラを内蔵して「見たものを撮る・AIが解説する」路線よ。スナップも同じくカメラ付き。業界の常識は「スマートグラス=身につけるカメラ」なの。

つまり今の業界は、「もっと撮れ」「もっとAI」「もっと機能」の大盛り無料キャンペーン中ってわけ。

そこにEven Realitiesは真逆を張った。カメラなし、スピーカーもなし。レンズに内蔵した緑色の表示だけで、通知・ナビ・リアルタイム翻訳を目の前に映す。録画機能がないから、あなたの周りの人は「撮られてるかも」と身構えなくていい。創業者のウィル・ウァン氏いわく、狙いは「デバイスを取り出さずに、必要な情報だけが視界に届く」世界。

これ、ただの機能の引き算じゃないのよ。「録画しないこと」を、あえて売りにしてるの。

最近のテック企業って、「安心してください、全部集めます」が標準装備だったじゃない?

この会社だけ、「いえ、集めません」って言い始めたのよ。

メタのスマートグラスがプライバシー論争で何度も炎上してきた歴史の、ちょうど裏返し。全員がカメラを盛る中で、カメラを捨てることが差別化になる——引き算が商品価値になる時代の、象徴的な賭けなのよ。

なぜ中国の1兆円がここに賭けたか

さて本題。なぜ美団とテンセントという中国の巨人が、この逆張りに240億円を積んだのか。お金の理屈で読むわよ。

理由その1:スマホの次の”入口”が欲しい。美団の担当パートナーはこう言ってるの——「AI革命には、スマホを超える新しいインターフェースが要る。メガネが最有力候補だ」と。テンセントも美団も、中国でスマホアプリの覇者になった会社。でも次にAIが主役の時代がきたら、その入口がスマホじゃなくなるかもしれない。だったら次の入口を今のうちに押さえておきたい——アップルやOpenAIがやってることと、動機はまったく同じなの。

理由その2:市場が本物になってきた。調査会社IDCによれば、スマートグラスの世界出荷台数は今年1〜3月で前年同期比167%増、225万台。ニッチな趣味の道具から、伸びる市場へと変わり始めてる。投資家はね、「未来」を買ってるように見えて、実は「伸び率」が大好物なの。伸びる市場には、お金が群がるのが資本主義の常よ。

理由その3:これも”元アップル人材”の物語。創業者ウァン氏は、2016〜2018年にアップルでApple WatchとiPhoneの開発・量産に関わった元エンジニア。元アップル人材、最近ほんと多いのよ。アップルって会社なのか、人材育成スクールなのか分からなくなってきたわ。昨日のアップル対OpenAI訴訟で「元アップル人材が次の箱を作る」構図を書いたけど、それは訴訟沙汰のシリコンバレーだけの話しじゃなかったの。アップルで箱の作り方を学んだ人が、今や世界中で”次の箱”を作ってる。中国のユニコーンも、その一つだったってわけ。

ちなみにこの会社、資金の出し手はほぼ中国系VCなのに、ユーザーの半分以上と開発者の約8割はアメリカにいるの。中国資本×米国市場×グローバル人材——国境をまたいで組み上がった、いかにも2026年らしい会社よ。

もうね、国籍で整理しようとすると頭がバグるの。今のテックって、国籍より資本と人材のほうが軽々と国境を越えるのよ。

日本への影響

さて、あたしたちの足元。「深圳のメガネなんて、日本に関係ある?」って思った? これが結構あるのよ。

“次の箱”競争に、日本のプレーヤーがいない問題

まず、耳の痛い話しから。今回名前が挙がった主役を並べてみて——メタ(米)、スナップ(米)、シャオミ(中)、RayNeo(中)、Rokid(中)、そしてこのEven Realities(中)。アップル、サムスン、グーグルも参入準備中と報じられてる。

この”次の箱”レースの主要プレーヤーに、日本企業の名前がほぼ出てこないの。

昔なら「ソニーは?」って自然に思ったはずなのに、今はその名前が最初から候補に出てこない。これ、静かに結構ショックなのよ。

かつてウォークマンやガラケーで「身につける電子機器」の先頭を走ってた国が、次の身につけデバイスでは観客席にいる。これは、じわっと効く問題よ。

でも「中身」では日本の出番がある

ただ、昨日のアップル記事でも書いた通り、この手のデバイスの中身——微細なディスプレイ、光学部品、センサー、電池材料——には日本企業の技術が入り込む余地が大きいの。

完成品ブランドで勝てなくても、部品で稼ぐ道はある。

実際Even Realitiesは「マイクロチップ、光学、導波路を一体で設計するのが一番の投資先」と言ってて、これはまさに日本の精密技術が得意な領域。主役になれなくても、名脇役として稼ぐ——それが今の日本のハードウェアの現実的な立ち位置なのよ。

日本、最近ほんと「主演男優賞」じゃなくて「技術協力」が似合いすぎるの。

プライバシー疲れは日本の消費者にも効く

もう一つ、消費者目線の話し。

この会社が「カメラなし」で伸びてる事実は、「常に撮られてる・データを吸われてる」ことへの疲れが、世界共通の購買動機になり始めたサインなの。

日本は特にプライバシーへの警戒が強い市場。「便利です」「でも全部見てます」って言われると、人間、急に便利さの味が薄くなるのよね。

もし”次の箱”が本当にメガネになるなら、「撮らない」を売りにする製品は、日本の消費者にこそ刺さる可能性があるわ。技術の派手さじゃなく「安心」で選ばれる時代——それは、日本の丁寧なものづくりが本来得意だったはずの土俵でもあるのよ。

ブランドで世界を獲るのは難しくても、「信頼される中身」で選ばれる道なら、まだ十分に残ってる。悲観するにはまだ早いってことね。それに、部品や素材で世界のデバイスに食い込めれば、完成品ブランドの浮き沈みに一喜一憂せずに稼げるという強みもあるの。

派手さはないけど、意外としたたかな立ち位置よ。

まとめ:足し算の時代に引き算で勝つ

スマートグラスの歴史って、ずっと足し算だったの。

カメラを付けろ、センサーを増やせ、AIを盛れ、と。そんな中でEven Realitiesは、カメラを引き算して1兆円企業になった。

「何を載せるか」じゃなく「何を載せないか」で勝負する会社に、中国の巨人が賭けた——ここが今日いちばん覚えて帰ってほしいポイントよ。

次の箱がメガネになるのか、まだ誰にも分からない。でも一つ確かなのは、その箱を巡って、アップルもOpenAIも中国勢も、みんな同じ椅子を狙って走り出してるってこと。そして今のところ、その椅子取りゲームの中に、日本の足音はあまり聞こえてこない。悔しいけど、それが現在地なの。

だからこそ、あたしたちは「次の箱」の話しを、他人事じゃなく見ておくべきなのよ。だって、その箱に何を載せて、何を載せないかを決めるのは——最後は、それを買うあたしたち消費者なんだから。

世の中ってね、足し算して勝つ人もいれば、引き算して勝つ人もいる。あたしは最近、年齢と一緒で、余計なものを減らすほうがずっと難しいって知ったわ。テックも人生も、「全部盛り」が正解とは限らないのよ。

テック業界って、「機能を増やしました」で競争してきたのに、「何も撮りません」が一番新しく見える日がくるなんてね。未来って、案外ひねくれてる。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

In a world full of lenses, they sold blindness.


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※本記事はテッククランチ、CNBC、Dealroom、IDC等の公開情報をもとに構成しています。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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