「頭金の代わりに、エヌビディアなどの成長株を買うべきだった」——アメリカの若い世代から、こんな声が漏れ始めてるの。ブルームバーグが7月10日、「持ち家はもう、以前ほど資産形成に役立たないと考える40歳未満が増えている」と報じたわ。
長いあいだ、持ち家は「大人になった証」で、「ローン35年組へようこそ」っていう、大人の入会式みたいなものだったのよ。
ローンを組んで家を買えば、家賃を払い捨てるより得——それがアメリカンドリームの土台だった。その土台に、若い世代がヒビを見つけ始めてる。
今日はこの「持ち家神話のゆらぎ」を、アメリカと日本の真逆っぷりを軸に読み解くわ。
結論から言うと、日本の方が話しはもっとこじれてるの。
アメリカで何が起きてるの?
まず数字の話しから。アメリカで持ち家への疑問が広がってる理由は、突き詰めればシンプルなの。家の値段の上がり方が、給料の上がり方を追い抜いた——これに尽きる。
住宅価格と保有コスト(固定資産税、保険、修繕費)が急騰して、賃金の伸びを置き去りにした。だから若い世代にとって、家は「手が届かないうえに、無理して買っても昔ほど儲からないもの」に見え始めてるの。
家が「住む場所」じゃなく、「ラスボス」になってきたのよ。倒してもエンディングがくるとは限らないタイプのね。そこで出てくるのが冒頭のセリフよ。「あの頭金を、S&P500やエヌビディアに突っ込んでたら、今ごろ家より増えてたじゃない」って。
もちろん後出しジャンケンよ。エヌビディアなんて、今だから神様扱いされてるだけで、数年前なら「え、半導体? パソコンの中身?」で会話が終わってた人も結構いたんだから。
実際この数年、株価の上がり方は住宅を上回る場面が多かった。頭金という大金を「家という一つのカゴ」に入れる代わりに、株に入れておけば——という後悔は、数字の上ではあながち的外れじゃないの。
家は動かせないし、売るのも手間。株はスマホで一瞬で売れる。
家は「売ろう」と思っても、不動産屋さんとの打ち合わせが始まり、写真を撮られ、内覧され、「水回り綺麗ですね」と知らない人に褒められる長旅が待ってる。
株は親指一本よ。「資産の流動性」で見たとき、家の分が悪くなってきたのよね。
ただし、ここは冷静に補助線を引くわ。株が住宅に勝ったのは「結果論」でもあるの。
値上がりした株を後から見て「買っておけば」は誰でも言える。株は下がる時は家より速く下がるし、家には「住む場所」という株にはない実用価値がある。
だからこれは「株が正解、家が不正解」って話しじゃなくて、「家=無条件に正解」だった時代が終わった、という話しなのよ。
同じ時期、日本の若者は真逆に走ってる
さあ、ここからが本題。同じ「家が高すぎる」状況で、日本の若者はアメリカと真逆の行動をとってるの。この対比が面白いのよ。
アメリカの若者が「高いから、もう買わない」と引き始めてるのに対し、日本の若者は「高いから、今すぐ買わなきゃ」と焦って飛び込んでる。日経によれば、住宅高騰のさなかで20代の持ち家率がむしろ過去最高を記録してるの。
「今、購入しなければ、もっと値上がりする」——2025年秋に東京の中古マンションを約6000万円で買った20代の共働き夫婦の言葉が、その心理を象徴してるわ。バーゲンセールじゃないのよ。なのにみんな「来年もっと高いかもしれません」の一言だけで、数千万円の決断をしてる。
なぜ真逆になるのか。カラクリは「その国の物語がどっちを向いてるか」なの。
- アメリカの物語:「株で増やす」が身近。だから家を買わない選択が「株に回す」という前向きな判断になる
- 日本の物語:「これ以上高くなる前に確保しないと、一生買えない」という恐怖が先に立つ。焦って買う
そしてその日本の恐怖には、根拠もあるの。
東京23区の新築マンション平均は1億円超え、中古でも23区の年間平均が前年比プラス34.6%で1億393万円という異常な世界(REDS調べ)。新築マンションの年収倍率は首都圏で13.74倍、東京都だけなら17倍にも達してる(東京カンテイ)。
年収の17倍——もう「働いて買う」の常識が壊れかけてるのよ。
なぜ日本の家はここまで高い?
「給料は上がらないのに、なんで家だけこんなに上がるの?」って思うわよね。
理由は主に5つ、全部あたしたちが最近この場所で書いてきたテーマと地続きなの。
- 円安:建材の多くを輸入に頼ってるから、160円台の円安がそのまま建築費を押し上げる。先週のFRB記事で書いた「円安の請求書」が、家の値段にも届いてるわけ
- 人手不足:建設業界は就業者の3〜4割が55歳以上、29歳以下は1割。人が足りなくて人件費が上がる
- 供給不足:2026年の首都圏新築マンション供給は約2万3000戸で過去50年で最低水準の見通し。売れ残りを恐れたデベロッパーが供給を絞ってる
- 投資マネー:都心は外国人投資家や富裕層の「資産防衛」の草刈り場。実際に住む人じゃなく、お金を置いておく箱として買われてる
- 金利:日銀が利上げに動いて「金利のある世界」に入った。デベロッパーが土地を仕入れて建てるお金にも利息がつくから、その調達コストが物件価格に乗る。しかも買う側の住宅ローン金利も同時に上がる——作る側のコストも、借りる側のコストも、行き着く先は結局あなたの財布なの
つまり全部、「あなたのせいじゃない」の。円安も、人手不足も、供給不足も、投資マネーも、金利も。ここまで揃うと、個人の節約術で勝負してる場合じゃないのよ。
とくに投資マネーが効いてるの。都心の家は「住む場所」から「資産を置く箱」に変わりつつある。人が住むための家なのに、お金だけ住民票を移してきてる感じなのよ。
ニューヨークやロンドンで先に起きたことが、東京でも進んでる。住むための家を、投資家と取り合う時代なの。
そして5番目の金利が、じわっと効いてくるのがこれから。仮に金利が1%上がれば、月々の返済を同じに保つなら借りられる額は1割前後も目減りするの。「去年なら手が届いた物件に、今年は届かない」——価格が1円も動いてなくても、金利のせいで買えなくなる、そういう時代に入ったのよ。
日本への影響
ここまでも日本の話しをしてきたけど、あたしたちの家計に引きつけて、もう一段具体的に考えるわね。
「賃貸か持ち家か」の前に、「そもそも買えるのか」
昔の「賃貸vs持ち家」論争は、両方買える前提での損得比較だったの。
でも今の日本、特に都心では、その前提自体が崩れてる。「どっちがお得?」じゃなくて、「そもそもゲーム機を持ってない人」が増えてるのよ。
年収の17倍のものは、そもそも多くの人にとって選択肢じゃない。
だから議論は「どっちが得か」から「無理して買うか、きっぱり賃貸か、エリアを諦めるか」に変わってきてる。これは負けじゃなくて、前提が変わっただけ。
高すぎる椅子取りゲームに、無理に参加しない自由だってあるのよ。
頭金を「家」に入れるか、「投資」に回すか——日本版の問い
アメリカの若者の「頭金でエヌビディア」発言、日本でも他人事じゃないの。
新NISAが始まって、日本でも「頭金を作る代わりに、その分を積立投資に回す」という選択が現実的になった。数百万円ってね、昔は「家を買う準備金」だったの。
今は「オルカン買う?」「S&P?」「いや現金?」って会議が始まる。頭金が、資産運用会議の議題になったのよ。
数百万円の頭金を、都心の一室の頭金にするか、S&P500の積立に入れるか——これは今、日本の20代・30代がリアルに悩んでる問いよ。
ただし、どっちが正解とは言わない。家には住む場所という価値があるし、投資には元本割れのリスクがある。金利のある世界に入って住宅ローンの負担も変わった。
大事なのは「家は絶対」でも「投資が正解」でもなく、自分の年収・暮らし方・何年その場所に住むかで、数字を並べて自分で決めること。その計算から逃げないことだけが、唯一の正解なの。
金利のある世界に入って、変動金利のローンなら返済額が将来変わる可能性もある。逆に投資も、積立とはいえ元本が保証されるわけじゃない。どっちにもリスクがある以上、「なんとなく」で数千万円を動かすのが一番こわいのよ。
「家という檻」問題
もう一つ、あたしがどうしても言っておきたいこと。
持ち家って、時に人を土地に縛りつけるの。
ペアローンって、幸せな制度でもあるの。でも時々、「離婚したい」じゃなく「ローンがあるから離婚できない」に変換される。住宅ローンは固定金利でも、人生は固定じゃないのよ。
「家を買ったから、この働き方を辞められない」——それは、経済的自立とは逆を向いた鎖になりうる。家を持つこと自体は素敵よ。でも、家のために人生の選択肢を狭めるなら、順番が逆。
持ち家は人生の目的じゃなくて、人生を楽にする道具のはずなんだから。経済的自立を考えるなら、「動けること」そのものが資産よ。転職も、引っ越しも、いざという時の決断も、身軽さがあってこそできる。何千万円のローンでその身軽さを手放す前に、それが本当に自分の望む暮らしなのか、立ち止まって考えてほしいの。
まとめ:神話が終わると自分の頭で考える番が来る
アメリカの若者は「持ち家は堅実」という神話を疑い始めた。日本の若者は「今買わなきゃ一生買えない」という恐怖に駆られてる。方向は真逆だけど、根っこは同じ——「家を買えば安泰」という、親世代の物語が通用しなくなった、ということ。
神話が終わると、人は不安になる。でもね、神話って便利だっただけで、別に正しかったわけじゃないのよ。
神話が終わるのは、怖いことじゃないわ。むしろチャンスなの。
「みんなが家を買うから」でも「もう家は損だから」でもなく、自分の家計と人生に合わせて、ゼロから計算し直せる時代になったってこと。
持ち家も、賃貸も、投資も、全部ただの道具。どれを選ぶかじゃなくて、なぜ選ぶかを自分の言葉で言えること——それが、神話が終わった世界での、いちばん確かな資産なのよ。
昔は「家を持った人」が勝ち組だった。今は「選んだ理由を説明できる人」が強い。その違いは、思ってる以上に大きいの。
家は人生最大の買い物。……って親世代は言うけど、今の若い世代からしたら、人生最大の”悩み”になってるのよね。
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
A house is a place to live, not a personality.
📖 関連記事 →
- あなたの資産、働いてる?|家計2,386兆円の裏で開く投資した人としない人の静かな差
- 新NISAって結局なに?|年360万・生涯1,800万の「非課税の箱」を最速で理解する
- 米Z世代5割が「デート代ゼロ」|物価高は恋愛という人生の選択まで削り始めた
※本記事はブルームバーグ、日本経済新聞、東京カンテイ、不動産経済研究所等の公開情報をもとに構成しています。


