ねぇ聞いて、これ、めちゃくちゃ象徴的な3日間だった。
5/13-15、トランプ大統領が習近平国家主席との米中首脳会談のため北京へ。第2期政権で初の中国訪問。前回二人が会ったのは2025年10月の釜山APECサミット(韓国)、約半年ぶりの再会。
結論から言うと:
- 表向き:「素晴らしい関係」「ホルムズ合意」「ボーイング200機」
- 裏:台湾警告、H200チップは1台も納品されてない、ボーイングは期待外れ
「合意したフリして、本音は別の所にあるカップル」が、世界中の前で笑顔の握手をしてる構図。
整理するわよ。
米中首脳会談、何が起きたのか
3日間のスケジュール:
- 5/13(水)夜:トランプ北京到着、習近平側近の韓正国家副主席が出迎え
- 5/14(木):本会談2時間15分 + 天壇公園訪問 + 国賓晩餐会
- 5/15(金):中南海でワーキングランチ + 茶会、午後離北京
会談トピック:貿易、関税、AI、レアアース、イラン戦争、台湾、ホルムズ海峡。
そして今回最大の特徴は——トランプが「資本主義アベンジャーズ」を引き連れて行ったこと。
資本主義アベンジャーズ、北京で集結
トランプに同行したCEOは12名以上、合計純資産は約1兆ドル。
コアメンバー(ガチ勢)
イーロン・マスク(テスラ/SpaceX、純資産6,880億ドル、世界一の富豪)
テスラ上海工場、2026年1-4月の販売292,876台、前年同期比+26.7%。中国市場は死守したい。
ちなみに去年の夏、マスクはトランプとX上で派手にケンカ(エプスタイン関連の発言で炎上)。後日マスクが「投稿を後悔した」と発言、和解。今回の同行は「公の和解パフォーマンス」でもある。
ティム・クック(アップル、9月退任予定)
iPhoneの米国販売6,000万台/年、約80%が中国製造。これが崩れたら、iPhoneの値段、跳ね上がる。クックの最後の重要外交。
ジェンスン・ファン(エヌビディア、純資産1,830億ドル)
当初は同行リストになかったのに、急遽トランプがアラスカでエアフォースワンに合流させた。後で詳しく書くけど、これがアベンジャーズで一番熱い話。
ケリー・オートバーグ(ボーイング)
中国の輸入関税125%で大打撃、中国航空会社が機材受領拒否中。今回の最大のお土産を狙う。
サブメンバー(ビジネス界の重鎮)
金融4人:
- ラリー・フィンク(ブラックロック、世界最大の資産運用会社、運用資産10兆ドル超)
- デビッド・ソロモン(ゴールドマン・サックス)
- ジェーン・フレイザー(シティ)
- スティーブン・シュワルツマン(ブラックストーン)
その他テック:
- ダイナ・パウエル・マコーミック(メタ)
- 他メンバー企業として:シスコ、クアルコム、マイクロン、コヒーレント
製造・農業・バイオ:
- H・ローレンス・カルプ(GEエアロスペース)
- カーギル(穀物大手)
- イルミナ(ゲノム解析)
決済:
- ビザ、マスターカード
つまり、米国のテック・金融・製造・農業・半導体・バイオ・決済の巨人、ほぼ全ての業界代表が勢揃い。
習近平からCEO団へのメッセージ
新華社報道:
「中国の門は更に広く開かれる。米企業が中国の改革開放に深く関与し、双方が恩恵を受けてきた」
つまり「あんたたちのビジネス、中国でやらせてあげるわよ」。
ジェンスン(エヌビディア)、記者団に:
「人類史上最も重要なサミットの一つ」
なぜここまで言うのか、理由は後述。
合意したこと(表向き)
ここから、会談内容の整理。
経済・貿易:
- ボーイング機200機購入合意(737型)
- 米国産大豆・農産物の購入拡大、米通商代表によると「数百億ドル規模」
- 米国産原油・LNG(液化天然ガス)購入、テキサス・ルイジアナ・アラスカから出荷予定
安全保障:
- ホルムズ海峡開放維持、習近平は「海峡軍事化」「通行料徴収」に反対表明
- イラン核兵器保有阻止で合意
- トランプ発言「習近平がイランへの軍事装備供与しないと約束」(実行されるかは不明)
外交儀礼:
- トランプ、習近平夫妻を9月24日ホワイトハウスに招待(返礼訪問)
ホルムズ合意、米中が「ここは開けとこうな」って握ったのよ。
📖 ホルムズ海峡については別記事で書いた→ [ホルムズ海峡って何が問題?|世界の石油の25%が通る、地球で一番狭い大動脈]
で、本当に成果あったの?——ボーイング200機の真実
ここから、雲行きが怪しくなる。
ボーイング機の発注、期待は500機+大型機100機の計600機規模。結果は200機。約3分の1。
発表後、ボーイング株は下落。期待外れ。
大豆・農産物も「数百億ドル規模」と曖昧で、具体額の明示なし。
CNNの専門家コメント(要約):
「米中の二国間合意、過去にも何度かあった。でも数十億ドル規模の取引は、実行に数年かかる。その間に、関係が悪化して合意が破棄されることも多い。今回の合意も、同じ目で見るべき」
つまり、表向きは「大きな合意」だけど、実際の中身はまだ未確定。
H200チップの綱引き——OK出てるのに、1台も動かない
そして、今回の会談で一番象徴的なエピソード。
エヌビディアのH200チップ(AI用)の中国販売問題。
経緯:
- 2025年12月:トランプがH200の中国販売「承認」(25%税付き)
- 2026年1月:商務省BISが正式ルール化、ケースバイケース審査
- 2026年1月以降:中国IT企業が約200万チップを発注
- 2026年5月14日:米国側、約10社の中国企業に追加で輸出許可承認
つまり「米国は売っていい」と完全にOK出してる。
でも:
実際の納品、現時点で1台もゼロ。
なぜ?
中国政府が、裏で中国企業に「待って」と指示してる。商務長官ラトニックも上院公聴会で確認済み:
「中国中央政府が、まだ買わせていない。彼ら(中国)は自国チップ産業に投資を集中させたい」
これって、こう例えると分かる:
「籍入れて、結婚式の招待状送って、披露宴の予約まで全部済んだのに、新婦側の親が『でも、ちょっと待って…』と動かなくて、いつまでも結婚式が始まらないカップル」
- 新郎側親(米国):「OK出した、許可するわよ」
- 新婦側親(中国):「うちの娘(中国IT産業)を育てたいから、今すぐお嫁に出したくない」
- 当事者(エヌビディア):「もう動きたい、損失大きい」
- 仲人(ジェンスンCEO):「両家の親、そろそろお願いします」と首脳会談に乱入
これが、ジェンスンが急遽アラスカでエアフォースワンに合流した理由。結婚式始めてほしくて、仲人として乗り込んだのよ。
数字でいうと:
- エヌビディアの中国シェア(輸出規制前):95%
- 中国はかつてエヌビディア売上の13%を占有
- 2026年の中国AI市場規模(ファン推定):500億ドル
- エヌビディア在庫:70万チップ、TSMCに200万生産依頼
それでも、納品はゼロ。今回のサミットで動きが出るかが、エヌビディア(時価総額世界一)の今後を左右する。
(5/16更新)
会談後、トランプ自身が記者団に証言。H200チップの件、習近平に直接ぶつけた。返ってきた答えは:
「中国はまだ購入を承認していない。自国産業の発展を優先したい」
つまり、ファンCEOが急遽アラスカでエアフォースワンに合流して、サミットまで乗り込んだ甲斐——少なくとも今回の会談では、なかった。仲人として「両家の親、そろそろお願いします」と訴えに行ったけど、新婦側親(中国)は「うちの娘は、まだお嫁に出さない」を公式回答として返した格好。
エヌビディアにとって、500億ドル市場の扉は、まだ開かない。
でも、本音は別のところ——台湾警告(裏)
ここから、雰囲気が完全に変わる。
中国側の会談後発表(新華社):
- 習近平は「台湾は米中関係で最も重要な問題」と位置付け
- 扱いを誤れば「衝突や紛争につながり、関係全体を大きく危険にさらす」と警告
一方、米国側の発表(ホワイトハウス):
- 台湾の言及、ゼロ
- 焦点は経済、イラン、ホルムズ
つまり:
中国「台湾の話、めっちゃしたわよ。トランプにキレといたから」
米国「いや、経済の話で盛り上がりました」
同じ会議に出てたのに、発表内容が全然違う。
これが「合意したフリして、本音は別の所にあるカップル」の本質。両方とも、自分が見せたい部分だけ国民に出してる。
(5/16更新)
会談後、トランプ自身が機内で記者団に発言。これが結構な情報量。
- 習近平に「米国は台湾を防衛するか」と聞かれた時の答え:「そのことについては話さない」
- 「今、我々に必要のないものは、9,500マイル離れた所での戦争」
- 対台湾140億ドルの武器売却について「近く決断する」
ルビオ国務長官は別のテレビインタビューで「米国の政策に変更はない」と発言。
つまり、米国の台湾戦略は「戦略的曖昧性」を継続。中国が「最重要問題」と明言しても、米国は「話さない」と明言。この温度差が、米中関係の現状そのもの。
ちなみに「9,500マイル離れた戦争」発言、台湾有事のリスクに対するトランプの本音が透けて見える。「やりたくない」というメッセージ、中国にも、台湾にも、日本にも、しっかり届いてる。
で、日本のあなたに何か関係あるの?
「アメリカと中国が握手しようがケンカしようが、日本に何の影響があるの?」
——いえ、結構関係あるのよ。整理するわね。
1. ホルムズ合意=エネルギー価格の安定材料
日本の原油の中東依存度9割超、エネルギー自給率15.3%。ホルムズが安定する=ガソリン・電気・物価の下押し圧力が緩む可能性。
ガソリン補助金30.2円/Lも、いつまで続けるかの議論に影響。
ボーイング200機も、JAL/ANAの機材調達に間接的に影響(価格決定や納期に波及する可能性)。
2. 台湾警告=安全保障リスクの再認識
これが一番大きい。
中国が「台湾は最重要」と明言、米国は触れず。 つまり、台湾有事の際、米国の対応が「曖昧」のまま。
日本は台湾有事で確実に巻き込まれる地政学的位置。防衛費増額、エネルギー安全保障、半導体サプライチェーン——全部、日本の生活コストに直結する話。
3. H200チップ問題=日本のAI関連株・国産チップ戦略への影響
日本のAI関連株、特にエヌビディア株を持ってる人(ソフトバンクGなど経由含めて)、結構いるはず。
H200チップが中国で実際に動き始める → エヌビディアの中国売上回復 → 株価押し上げ。 でも、動かないまま → 期待外れで失望売り。
首脳会談後の動向で、日本の関連株は揺れる。
もう一つの示唆:日本も「国産チップ育成」議論、加速すべきか?
中国は「自国チップ産業育成のため、米国製を意図的に買い控えてる」。 日本のラピダス(国産チップメーカー)や産業政策の文脈で、この戦略をどう捉えるか、改めて問われる。
4. レアアース・半導体・AI=日本企業への影響
中国が米国にレアアース供給拡大を約束する可能性 → 米国の半導体・AI企業(エヌビディア、AMD等)に恩恵 → 日本の関連株(東京エレクトロン、ソフトバンクG等)にも波及。
ただし、中国の対米シフト=日本素材メーカー(信越化学、JSR等)への圧迫の可能性も。
5. 中国の米国産購入拡大=ドル高・円安傾向?
米中の貿易バランスが改善方向に動く → 米国の貿易赤字縮小 → ドル高・円安方向への圧力。 介入水準(157.80円)に戻ってる円相場、さらに圧力かかる可能性。
iPhone、Amazon、海外ブランド、海外旅行、すべてさらに値上げ圧力。
📖 為替の基本 → [円高って他人事?いいえ、あなたの財布の話よ]
6. 「日本、蚊帳の外」感
今回の会談、米中CEO団は華やか、でも日本企業の存在感、薄い。
トランプは1月、2月、3月、日本に首相、為替、関税で要求してきたけど、今は明らかに「中国優先モード」。
日本が独自の戦略を持つ必要性、より明確に。
6. 「日本、蚊帳の外」感
今回の会談、米中CEO団は華やか、でも日本企業の存在感、薄い。
トランプは1月、2月、3月、日本に首相、為替、関税で要求してきたけど、今は明らかに「中国優先モード」。
日本が独自の戦略を持つ必要性、より明確に。
(5/16更新)
「日本、蚊帳の外」感、ちょっと修正必要。状況が動いた。
トランプ、訪中直後にエアフォースワン機内から電話。相手は——高市首相。
しかも日本政府筋によると、トランプが電話した最初の人物が高市首相。約15分の会話。
「ironclad(鉄壁の)日米同盟」を再確認、中国(経済・安全保障)、イラン、インド太平洋について意見交換。6月のG7サミット(フランス)で対面会談する予定。
ただし、台湾について議論したかは、高市首相は明言を避けた。
そして地味だけど重要なファクト:日本側は本来、トランプの訪中前に訪日を希望していた。叶わなかった。
つまり、現状を整理すると:
- 訪日希望 → 叶わず(中国優先)
- でも訪中直後の最初の電話 → 日本(同盟確認)
- 台湾について話したかは → 不明
- 次の対面会談 → 6月G7、フランス(中立的な場所)
これをどう解釈するか、二つの読み方がある:
- 解釈A:日本の地政学的重要性を示すサイン。米中で何があろうと、日米同盟は最優先という米国の意思表示。
- 解釈B:トランプ流の「日本も大事だよ」ジェスチャー。本気度というより、訪中の影響を和らげるためのパフォーマンス。
どちらが正しいかは、6月のG7サミットの中身を見るまで分からない。
ただ確実に言えるのは——日本は完全な蚊帳の外ではない。でも、最前列に座ってるわけでもない。「気にかけてもらってる二列目」、それが今の日本のポジション。
締め——笑顔の裏側にある現実
2日間の首脳会談、表向きは「成功」。
トランプは「素晴らしい関係」
習近平は「協力的」
両方が満面の笑み。9月24日にはホワイトハウスで再会の予定。
でも、よく見ると:
- ボーイング期待600機 → 結果200機
- H200チップ承認しても納品ゼロ
- 台湾問題、中国は警告、米国は無視
- ホルムズ合意、長期実行の保証なし
「合意したフリして、本音は別の所にあるカップル」——これが米中関係の本質。 表向きは仲良し、裏は不信感の塊。
そして、いつもの結論。
米中が握手しようが、ケンカしようが、 ボーイング機200機でも600機でも、 H200が動こうが動くまいが、 台湾の話を発表しようがしまいが、 自分の暮らし、自分の判断、自分の足元。
これだけは、人任せにできない。
世界の大国がジェットコースターでも、自分の足元だけは整える。
それだけ。
📖 基礎解説 → [ホルムズ海峡って何が問題?|世界の石油の25%が通る、地球で一番狭い大動脈]
📖 為替の基本 → [円高って他人事?いいえ、あなたの財布の話よ]
※本記事は、CBS News、CNN、Reuters、Al Jazeera、Bloomberg、CNBC、NBC News、Xinhua、PBS等の報道・公開情報をもとに構成しています。


