20年間、一度も見なかったチャートを、毎朝見るようになった。
投資家って、そんなに簡単に習慣を変えない生き物なの。長年しみついたルーティンを、そう簡単には手放さない。でも今、日本株のプロたちが、韓国のKOSPI(韓国の株価指数)を毎日開いてるのよ。
JPモルガンのある市場ストラテジストは、在籍14年で初めて、韓国についてのプレゼンを社内のグローバルチーム向けに行ったんですって。日本株を20年以上見てきた別の専門家は、キャリアで初めてKOSPIのチャートを毎日チェックし始めたそうよ。
20年見なくてよかったものを、急に見なきゃいけなくなった。これ、地味だけど、けっこうな事件なの。
今日はこの「なぜ日本の投資家が、今さら韓国を気にし始めたのか」という話しをするわね。あなたの新NISAにも、実はしっかり関係あるのよ。
まず、韓国で何が起きてるか
韓国の株、今すごいことになってるの。
KOSPIっていうのは、ざっくり言えば韓国版の日経平均。韓国を代表する株価指数よ。
そのKOSPIが、6月に史上最高値をつけたのよ。ところがそこからが地獄で、7月13日には1日で約9%も暴落して、6,806ポイントまで沈んだの。5月に7,000を超えて「7,000ポイント時代」なんて浮かれてたのに、約2カ月でその大台をあっさり割り込んだのよ。
もっとすごいのが、これ。韓国には「サーキットブレーカー」という仕組みがあるの。株が急落しすぎた時に、パニックを鎮めるため取引を一時的に強制ストップする、いわば市場のブレーカーね。これが6月下旬には1週間で2回も発動したの。前日比8%超の下落で作動する仕組みが、たった数日で2回よ。
サーキットブレーカーって、本来は滅多に発動しないものよ。それが1週間で2回。
消防車が毎週来る家くらい異常なの。近所なら絶対「あそこ何があったの?」って噂になるレベルよ。
噛み砕き:KOSPIは「ほぼ半導体2社」でできてる
なんでそんなに激しく動くのか。ここを噛み砕くわね。
KOSPIっていう指数は、韓国の800社以上の株を集めて作られてるの。数だけ聞くと分散が効いてそうでしょ。ところが中身がすごく偏ってるのよ。
サムスン電子とSKハイニックス。この半導体2社だけで、KOSPI全体の時価総額の半分以上を占めてるの。
つまりKOSPIは「韓国の株価指数」という顔をしてるけど、実態は「ほぼ半導体メモリ指数」なの。サムスンがくしゃみをすると、KOSPIは39度の熱を出す。だから半導体に逆風が吹くと、韓国市場は他の国より激しく揺れるってわけ。
そして今、半導体にはたっぷり逆風が吹いてる。AI投資への疑念、メモリ価格の先行き不安——先週あたしが書いた「Kimiショック」や「日経暴落」と、根っこは全部同じよ。
で、なぜ日本まで巻き込まれるのか
ここが今日の本題ね。「韓国の株が落ちるのは韓国の事情でしょ」と思うでしょ。ところが、そうじゃないの。
証券会社が出した分析が、見事に構造を見せてくれてるわ。
7月16日、KOSPIが一時7.6%急落した日、日経平均も急落したの。翌17日の午前時点で、日経は前日比2,418円安。で、その下落の中身を分解すると——下げ幅の約8割が、電気機器セクターだったの。
もっと具体的に言うわね。この日の日経の下げは、たった4銘柄でほぼ説明がついてしまうの。
- アドバンテスト:1銘柄で約667円の押し下げ
- 東京エレクトロン:約558円
- ソフトバンクグループ:約403円
- キオクシア:約200円
この4銘柄だけで、日経の下げ幅の75%よ。全部、半導体かAI関連。
なぜこうなるか。答えは「メモリ市況は世界共通」だから。HBMとかDRAMとか、AIに使う記憶用の半導体って、韓国のサムスン・SKハイニックスも、日本のキオクシアや製造装置メーカーも、同じ一つの世界市場で商売してるの。だから韓国勢が「メモリの先行き怪しいぞ」と売られると、同じ市場にいる日本勢も自動的に売られる。国境は関係ないのよ。市場が一体化してるの。
これが「KOSPIと日経の相関が急上昇してる」という現象の正体。ソウルが転ぶと東京も転ぶ。しかも、その連鎖のスピードが年々速くなってる。
見たくなかったものを、見る羽目になった人たち
さて、ここからが面白いところよ。
日本の投資家って、長いこと「アメリカだけ見てればいい」という世界に住んでたの。アメリカだけ見てれば食べていけた。英語だけ勉強してればよかった。ところが突然、「はい、韓国語の教科書も追加です」みたいな世界になったのよ。ニューヨークが上がれば喜んで、下がれば凹んで。参考にするのはS&P500とナスダック。それで十分だったのに。
ところが今、その人たちが、見たくもなかった韓国のチャートを、毎朝チェックする羽目になってるの。
冒頭のベテランたちを思い出して。14年間プレゼンしなかった人が、急に韓国を語り出す。20年間見なかった人が、KOSPIを監視し始める。これって、要するに「今までのやり方じゃ、もう説明がつかなくなった」ってことなのよ。
UBSのストラテジストは、この状況をこう言い切ったわ。「これは、AIラリーが続く限り、投資家が受け入れなければならない新常態です」って。
……”受け入れなければならない”。この言い方に、全部が詰まってるでしょ。歓迎してるんじゃないの。諦めて受け入れてるの。マーケット用語で一番悲壮感があるの、この「受け入れなければならない」説あるわ。
人って世界が変わる時、たいてい最初にくる感情は「わくわく」じゃなくて「めんどくさい」なの。
投資家って、「革命がきます!」より「はい、仕様変更です。」の方が、よっぽど疲れるのよね。「え、今度は韓国まで見なきゃいけないの?」「勘弁してよ」というボヤきから、新しい時代は始まる。
革命はいつも、誰かの「はぁ、また覚え直しか」というため息の上に立ってるのよ。
物語の3話目
気づいた人もいるかもしれないわね。この話し、あたしが書いてきたことの続きなの。
日曜に「市場が電卓を叩き始めた」(AI投資の採算疑念で日経が2,694円安)。そして「Kimiが安すぎて株が青ざめた」(中国の格安AIショック)。そして今日、「韓国が転ぶと日本も転ぶ」。
全部、同じ一つの地殻変動の、別の揺れ方なのよ。AIという巨大な期待にお金が集まりすぎて、そのお金が今、世界中で同時に不安がってる。震源地がアメリカ、中国、韓国と移動しただけ。地面はずっと同じなの。震源地がどこであっても、揺れてる地面は一つ。
そしてその地面の上に、あたしたちの新NISAも乗ってるってわけ。
日本への影響
じゃあ、あたしたちの財布の話しね。
あなたの新NISA、実は「半導体詰め合わせ」かも
「オルカンだから安心」「日本株インデックスだから分散してる」。その気持ち、わかるわ。あたしも昔はそう思ってた。でもね、ちょっと中身を覗いてみましょ。
日本株のインデックス(日経平均やTOPIX連動)を持ってる人。あるいは新NISAで日本株の投資信託を積み立ててる人。あなたのポートフォリオは、思ってるより半導体に偏ってる可能性があるわ。
さっき見たとおり、日経の値動きは、ほんの数銘柄の半導体・AI株にすごく左右されるの。「日本の会社に幅広く分散してる」つもりでも、実際は「値動きの主導権を、一握りの半導体株に握られてる」状態かもしれない。これは知っておいて損はないわ。
自分が何に賭けてるのか、中身を知らずに乗ってるのが一番こわいから。
で、どうすればいいか
いつもの結論よ。慌てて売らない。淡々と積み立てる。
理由も毎回同じ。今回の下落は「半導体が終わった」んじゃなくて「AI投資の回収時期が読めない」からきてるの。メモリ需要そのものが消えたわけじゃないわ。
実際、市場では「外国人の強制的な売りが一巡すれば、サムスンやSKハイニックスは買い直される可能性がある」という見方も出てるの。要は、下げすぎた反動で戻る目もあるってこと。
もちろん「だから絶対大丈夫」とは言わないわ。半導体メモリは、数年後に供給過剰(作りすぎ)で価格が下がるサイクルに入るという懸念もあって、そこは本物のリスクよ。
でも、それは今日慌てて売る理由にはならないの。積立の強みは、こういう乱高下を「安く買えるチャンス」に変えられることだから。
韓国を「対岸の火事」と思わないこと
今日いちばん持ち帰ってほしいのは、これ。もう「日本株だけ見てればいい」時代じゃないの。
あなたが日本の半導体株や、それを含むインデックスを持ってるなら、ソウルの市場は他人事じゃないわ。KOSPIが夜中に暴れたら、翌朝の日経がその影響をもろに受ける。
世界は、あなたが思ってるより、ずっと狭くつながってるの。
とはいえ、毎朝KOSPIチャートとにらめっこする必要はないわよ。プロじゃないんだから。ただ「日本株は韓国と地続きなんだ」という地図を頭の片隅に置いておくだけで、ニュースの見え方が変わる。それで十分よ。
この連動、円にも効いてくるの
もうひとつだけ、地味だけど大事な話しを添えておくわね。この日韓の半導体連動は、実は為替とも無関係じゃないの。
日本の半導体関連って、アドバンテストも東京エレクトロンも、売上の多くを海外で稼ぐ輸出企業でしょ。こういう企業の株は、円安だと「輸出で儲かる」と買われて、円高だと売られやすい。つまり半導体株は、AIの期待だけじゃなく、為替の風にも揺れてるの。
今は円安(ドル円は160円台)が下支えしてるけど、もし世界的なリスク回避が強まって急に円高に振れたら、半導体株は「AI不安」と「円高」のダブルパンチを食らう可能性があるわ。
韓国発の揺れを見るときは、その裏で円がどっちを向いてるかも、ちらっと気にしておくといいの。全部つながってるのよ、ほんとに。
まとめ:世界が狭くなるってこういうこと
今日の話しをまとめるわね。
韓国のKOSPIが、半導体2社の急落で1日に9%近く下げた。サーキットブレーカーは1週間に2回。そしてメモリ市況という共通の糸で、その揺れが日本にまっすぐ伝わる。日経の下げの4分の3が、たった4銘柄の半導体・AI株で説明できてしまう時代になったの。
だから、20年韓国を見なかったプロたちが、今さら韓国を見始めた。「新常態を受け入れるしかない」と、ため息まじりに。
でもね。これって、悪いことばかりじゃないと思うのよ。世界がつながるって、リスクも一緒に運んでくるけど、同時に「一つの市場だけに賭けなくていい」ということでもあるでしょ。怖がって縮こまるより、地図が広がったと思うほうが、たぶん健康的よ。
人って、変化の入り口ではいつもボヤくの。「めんどくさい」「また覚え直し」って。でも、そのボヤきながらちゃんと韓国のチャートを開いてるあたりが、人間の可愛いところよね。文句を言いながら、結局ちゃんと適応していくの。
あたしたちも同じ。世界が狭くなったなら、その狭くなった世界の歩き方を、のんびり覚えていけばいいのよ。
世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。
Seoul sneezes, Tokyo catches the cold.
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※本記事はロイター、ブルームバーグ、マネックス証券、楽天証券トウシルの公開情報をもとに構成しています。


