Googleが育てた天才たちはなぜGoogleを去るのか|Transformer著者8人全員退社、ジェフ・ディーンも27年で卒業

AI業界における人材流出と独立を象徴するイメージ画像。大企業のロゴを背にした複数の人影が、それぞれ別の方向へ歩き出し、新しい小さな建物や芽を伴うシルエットへと向かっていく構図。巨大な組織から次々と創業者が生まれていく様子を表現している一枚。 テック

今週、Googleでチーフサイエンティストを務めてきたジェフ・ディーンが会社を去ったの。1999年に社員番号30番として入社してから27年、Google Brainの共同創業者としてGoogleのAI開発の顔だった人よ。

Google Brainって何?

Google Brainとは、2011年にGoogle社内で立ち上がった、AIの研究をする専門チームのことなの。会社の中にある「AI専門の研究室」みたいなイメージ。深層学習(コンピューターが大量のデータから自分でパターンを見つけ出す学習方法)の実用化を早くから進めていて、いまのAIブームの土台を作った中心組織のひとつよ。

2023年には、同じくGoogle傘下のAI研究所だったDeepMindと統合されて、「Google DeepMind」という一つの組織になったの。つまりGoogle Brainは、いまのGoogleのAI開発の”出発点”にあたる存在ね。

そして今回、その創業メンバーが会社を出たのよ

サンジェイ・ゲマワット、クォック・レー、オリオール・ヴィニャルズという同僚3人と一緒に、AIで科学研究を加速する新会社「Discovery Loop」を立ち上げたの。Alphabetも投資家として参加していて、クラウドパートナーの立場も兼ねてる。

株価も、静かに反応してるわ

Alphabet株は、今回のAI組織再編の発表後に5%下落してるわ。ディーンの退社だけが理由とは言い切れないけど、少なくとも市場がGoogleのAI体制変更そのものを軽く見てるわけじゃない、ということね。

「大物が独立しました」というニュース単体なら、よくある話しで終わるところなんだけど。ちょっと調べてみたら、これ、Googleだけの話しじゃなかったのよ。もっと大きな構造がある。

Transformer論文の著者、8人全員がすでにGoogleを去ってるのよ

Attention was all they needed. Retention was another story.

2017年、Googleの研究者8人が書いた「Attention Is All You Need」という論文があるの。今のChatGPTやClaude、Geminiまで、いまのAIブーム全部の土台になった、あの論文よ。

Transformerって結局なに?

Transformerとは?AIが文章を読むとき、昔のやり方は本を一文字ずつ、頭から順番になぞっていく感じだったの。時間はかかるし、文の最初の方で読んだ内容を、最後まで覚えていられないこともあったわ。Transformerが持ち込んだのは、文章全体を一気に見渡して、「この単語は、この単語と関係が深い」って、離れた場所同士でも一瞬で結びつける仕組みなの。集合写真を見た瞬間に、誰が誰の方を見てるか、パッと分かる感覚に近いわ。この「どこに注目するか」を扱う仕組みが”Attention(注意)”で、論文タイトルの「Attention Is All You Need(注意さえあればいい)」は、まさにこの仕組みだけで十分だった、という宣言だったの。この発明のおかげで、AIは長い文章でも文脈をちゃんと掴めるようになって、いまのChatGPTやClaude、Geminiは全部この仕組みの上に建ってるわ。

著者はアシシュ・ヴァスワニ、ノーム・シャジール、ニキ・パーマー、ヤコブ・ウスコライト、ライオン・ジョーンズ、エイダン・ゴメス、ルカシュ・カイザー、イリヤ・ポロスキンの8人。

その著者8人が、いま何をしてるか。

ノーム・シャジールは2021年に退社してCharacter.AIを創業、Googleは2024年に約27億ドル規模の契約で彼を呼び戻したの。そして約2年後、2026年6月、今度はOpenAIへ移籍。27億ドル払って”おかえり”したら、”ただいま”のあとに”じゃあ行ってきます”されたのよ。あたしなら玄関で泣くわ。

エイダン・ゴメスは2019年に退社してCohereを創業、いまやユニコーン企業。アシシュ・ヴァスワニとニキ・パーマーは2021年にAdept AIを共同創業、そこも離れて2023年にEssential AIを新たに立ち上げてる。イリヤ・ポロスキンはブロックチェーン企業Near、ヤコブ・ウスコライトはバイオテック企業Inceptive、ライオン・ジョーンズは東京拠点のSakana AI。ルカシュ・カイザーはOpenAIへ。

8人中8人。退職率100%。Transformerよりきれいに収束してるわね。Google、人類のAI革命を生んだ論文は手元に残ったけど、書いた人は一人も残らなかった。いやもうこれ、人材流出というより世界で最も豪華な卒業制作なのよ。

Google「Transformerを作りました」。世界「すごい!」。Google「作者は?」。全員いません。……図書館に名著だけ残して著者全員引っ越すタイプの大学なの? Attention Is All You Need、論文のタイトルが2026年になって別の意味で完成しちゃったわね。

ジェフ・ディーンの退社は、”Google Brainを生んだ世代の退場”を象徴してるのよね

今回抜けた4人全員がGoogle Brainの創業者だったわけじゃないの。でも、ディーンとクォック・レーというBrain黎明期の中心人物に、Googleの基盤技術をディーンと一緒に作ってきたサンジェイ・ゲマワット、そしてGoogle DeepMindのAI研究を長年支えてきたオリオール・ヴィニャルズが加わってる。要するに「優秀な研究者4人が辞めました」じゃないの。GoogleのAI史を教科書にしたら、太字で載る人たちがまとめて退場したのよ。人事異動というより、巻末の「主要人物その後」を一気に読まされてる感じね。

人間ドラマとして一番刺さったのがこれ。ヴィニャルズは2013年、ディーンとのメールのやり取りでGoogleに入社してるの。今回のお別れ投稿で、こう書いてた。「私を連れてきた張本人が、次の跳躍を促している」。13年前にスカウトした本人が、今度は自分が去ることで、間接的に外へも連れ出した形になったの。採用した人が、最後は退職のきっかけになる。これ、なかなか書けない皮肉よね。

しかもこの4人、経歴を並べるとスタートアップの創業チームというより、AI版アベンジャーズの同窓会。投資家からしたらピッチ資料を見る前に履歴書で財布が開くやつよ。

そして一番おいしい皮肉がここ。辞められた側のGoogleが、Discovery Loopへ出資してるの。「退職します」「分かった。じゃあ株買わせて」。

シリコンバレーはCap Table(キャップテーブル)に名前を残すの。誰がどれだけその会社の株を持ってるかを一覧にした「株主名簿」みたいな書類のことよ。花束は残らないけど、名前は書類にしっかり残る。スケールが違うわ。

OpenAIも、静かに同じことをやってるわ

2024年にはCTOのミラ・ムラティが退社してThinking Machines Labを設立、共同創業者でチーフサイエンティストだったイリヤ・サツケバーも同じ年に退社してSafe Superintelligenceを立ち上げた。2025年にはMetaが新しい「スーパーインテリジェンス研究所」を立ち上げて、OpenAIからシェンジア・ジャオ、シュチャオ・ビー、ジアフイ・ユー、ホンユー・レンら複数の研究者が一度に移籍。ジャオはその後、同研究所のチーフサイエンティストとしてザッカーバーグと直接組むことになったの。

札束を持ったMetaの登場ね。1億ドル級の報酬が報じられる世界よ。あたしなんて転職するとき「基本給何%アップなら動こうかな」ってExcel開いてたのに、桁が違いすぎてExcelの方が先に音を上げそう。サム・アルトマン自身、Metaが1億ドル級のサインオンボーナスを持ちかけてきたと語ってるくらいなの。

でも面白いオチがあって、Metaに移った人の一部は、Metaからもすぐ出てるのよ。2025年8月には新スーパーインテリジェンス研究所から少なくとも3人が退社、うち2人はOpenAIに戻ってる。もう人材市場というより、AI研究者版・椅子取りゲームね。音楽が止まった瞬間、どこの社員証をぶら下げてるか本人も分からなくなるやつ。

研究担当VPだったリアム・フェダスは2025年に退社して、元Google Brainのエキン・ドーウス・チュブックとPeriodic Labsという研究スタートアップを設立。OpenAI自身がこの会社への出資・提携を表明していて、ここでも「送り出しつつ関係は続ける」という同じ構図が繰り返されてる。

xAIも似たような話で、2026年2月にSpaceXへ全株式交換で吸収された後、内部から50人以上の研究者・エンジニアが退社したと報じられてる。うち少なくとも11人がMetaへ、少なくとも7人がThinking Machines Labへ移ったとされてるわ。

唯一違う動きをしてるのがAnthropicなの

そしてこの札束戦争の横に、Anthropicがあるの。「うちはそのゲームやりません」で、人が残ってる。急にここだけ北欧の会社みたいなのよ。SignalFireの調査によれば、Anthropicの従業員定着率は80%でフロンティアAI各社の中で最高水準。むしろOpenAI、Google、xAI、Microsoft、Appleから人材を引き寄せてる側なの。Metaが9桁級の報酬で研究者を引き抜こうとしても、CEOのダリオ・アモデイは報酬原則を譲らない姿勢を明言してるわ。「誰かの名前にダーツが当たったからって、隣で同じくらい優秀な人の10倍払うべきってことにはならない」って。

これって”引き抜き”じゃなくて、”創業の反復”なのよ

ここが今回、一番人間くさいと思うところ。普通、優秀な人が会社を辞めるのは「もっと条件のいい場所へ移る」って話しが多いじゃない。でも今回並べた事例、条件じゃなくて「もう一度、自分の会社を作る」を選んでる人がほとんどなの。20年前後、会社の看板を背負って積み上げた信用が、ある日突然「自分の名前」の方が強くなる瞬間があるのよ。看板を降りても、その人について行く人がちゃんといる。それって、会社に残るより怖い賭けだと思うんだけど、この業界では毎年のように起きてるの。

あたしたちには、どう関係あるの?

「シリコンバレーの人事異動でしょ」で終わらせるにはもったいないから、押さえておくことは3つ。

① Alphabet株を持っているなら、「誰が辞めたか」だけじゃなく「誰が次を任されたか」を見ること。今回はディーンらの退社だけじゃなく、GoogleのAI経営体制そのものが大きく変わってるの。デミス・ハサビスは日常の経営から一歩引いてAlphabetのチーフサイエンティストへ、Google DeepMindの運営はコーレイ・カヴクチュオールが担う形になった。大物退社=即売り、じゃないのよ。会社を見るとき本当に怖いのは「誰が出たか」より「出た穴を誰が埋めるか」なの。

② AI企業の競争力を見るなら、モデル性能だけじゃなく「人が残るか」も見ること。AI企業の資産って工場だけじゃなくて、研究者そのものなの。Anthropicの80%という高い定着率は、「Claudeが何点取ったか」というベンチマークとは別の角度から、組織の強さを見る補助線になるわ。

③ 日本のAI人材市場にとっても他人事じゃない。ライオン・ジョーンズが東京拠点のSakana AIを選んだように、世界トップクラスの研究者が日本を拠点に選ぶケースも出てきてる。人材の流れは、いずれ日本の中の話にもなってくるわよ。

今日のまとめ

  • ジェフ・ディーンら4人がGoogleを退社し、AI研究スタートアップ「Discovery Loop」を設立。Alphabetも出資者・クラウドパートナーとして関与し、Alphabet株は発表後に5%下落
  • 2017年のTransformer論文著者8人は、2026年8月時点で全員がGoogleを去っている(ノーム・シャジールは2024年に一度呼び戻されたが2026年6月に再び退社)
  • OpenAIからも複数の研究者がMetaのスーパーインテリジェンス研究所へ移籍する一方、そこからさらに離脱してOpenAIへ戻る動きも出ている
  • xAIも2026年2月のSpaceXへの吸収以降、50人以上が退社したと報じられている
  • Anthropicは対照的に従業員定着率80%とフロンティアAI各社で最高水準を保ち、他社から人材を引き寄せている
  • 今回の動きの多くは「対立的な引き抜き」ではなく「円満な卒業・出資継続」に近い構図

会社が人を育てて、育った人がまた会社を作る。このループが止まらない限り、AI業界の”卒業アルバム”は、これからも毎年分厚くなっていくのよ。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

Big Tech built the talent. The talent built what comes next.


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※本記事はBloomberg、WIRED等の公開情報をもとに構成しています。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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