ベッセント「市場が知らない情報がある」発言で円高|それでも原油90ドルが勝った理由

ベッセント米財務長官の円高発言で円は上昇するも原油高が市場を支配した地政学リスク相場を象徴する、拡声器を握る小さな人影と、その言葉を押し返すように立ちはだかる巨大な原油タンカーの影を対比させた、バーガンディとチャコール基調のシネマティックで絵画的なデジタルイラスト 市場

「あなたの知らない情報を、私は持ってるの」

これ、言われたら気になるわよね。恋愛なら「え、何。浮気?隠し??まさか別のNetflixアカウント?」ってなるし、会社なら「え、何。リストラ?買収?あたしだけ来週から無職?」ってなる。

人間、「自分だけ知らない」に、めちゃくちゃ弱いのよ。

そして昨日。アメリカの財務のトップが、世界中の投資家に向かって、ほぼこれをやったの。「市場が知らない情報を、私は持っている」。

ちょっと待って。財務長官が市場相手に「私はあなたの知らないことを知っている」をやるの、強すぎない?しかも、その秘密は日本円に関するもの。当然、市場は反応して、円はちゃんと買われたの。

でも、面白いのはここから。同じ日、中東ではミサイルが飛び、原油は90ドルを突破。株も下がって、市場全体に緊張が走ったの。つまり昨日の市場、こういう状態だったのよ。

ベッセント「私だけが知ってる情報があります」
中東「ドーン」
原油「90ドル超えました」
市場「……ごめんベッセント、あとで聞く」

今日は、「偉い人の言葉」が、どこまで市場を動かせるのか、という話し。

先週から続いてる円安ドラマ、今週は出演者がさらに増えたの。もう為替の話しなのか、中東戦争なのか、アメリカの金利の話しなのか分からない。

安心して。市場本人も、たぶん忙しいから。

先週までのあらすじ

先週の金曜。FRB(アメリカの中央銀行)のウォーシュ議長が、「インフレがちゃんと2%に向かってる、と確信できなければ、まだやるべき仕事がある」って趣旨の発言をしたの。市場語に翻訳すると、「利下げ?誰がそんなこと言った?」よ。

市場は「これは金利を上げるかもしれない」と受け取って、ドルが買われ、円は一時1ドル=160円台へ。しかもその前に、日本とアメリカは協調して、約987億ドル(およそ15兆円)という歴史的な規模の円買い介入までやってたの。

15兆円。ゼロが多すぎて、あたしのクレカの明細じゃ表示しきれない金額よ。それだけの実弾を撃ち込んだのに、FRB議長がマイク一本持って登場して「インフレ、まだ気になるんだよね」って言ったら、円がまた160円。15兆円 vs マイク一本。先週は、マイクが勝ったの。市場って、金持ちのくせに、言葉に弱いのよね。

ベッセントさん、「俺だけ知ってる」カードを切る

そこで今週登場したのが、アメリカのベッセント財務長官。

彼、円安について「今すぐまた介入しろ!」と言ってるわけじゃないの。むしろ最近の円相場は「かなり秩序立ってる」と見ていて、日本がまた15兆円砲をぶっ放すより、日銀の金融政策でなんとかする方向を望んでる。

そのうえで昨日、テレビでこう言ったの。「市場が持っていない情報を、私は持っている」。

…………何それ。最終回の黒幕しか言わない台詞じゃない。

しかも続けて「日本政府と日銀は、円高につながることをすると私は考えている」と。記者が「それって利上げ?」と聞くと、「市場は今、それを織り込んでると思う」。ベッセント、匂わせがすごいの。

インスタなら絶対「詳しくはまだ言えないけど…🤫」ってストーリー上げるタイプよ。世界の財務長官が匂わせ女子になってる場合じゃないんだけど!

同じころ、日本の片山財務大臣も「金融市場の投機的な動きは、G20(主要国の集まり)として注視すべきだ」って発言。

日本とアメリカが、口を揃えて「円安、いい加減にしなさいよ」って牽制したわけ。

そして市場は——ちゃんと振り向いた

ここ、大事だから、はっきり言っておくわね。ベッセントさんの発言、市場に無視されたわけじゃないの。むしろ、ちゃんと効いたの。

「市場が知らない情報を持っている」という発言のあと、円は買われて、1ドル=159円台後半まで円高方向に動いた。市場は「…………何知ってんの?」って、ちゃんと振り返ったのよ。

そりゃそうよ。近所のおばちゃんが「私だけ知ってる」って言うのとはわけが違う。アメリカの財務長官が言ってるんだもの。情報源の格が違う。あたしだって、ベッセントに耳元で「市場が知らないこと、知ってるよ」って言われたら、「何!? 日銀!? 利上げ!? 植田さん今どこ!?」ってなるわ。

だから「口先介入は効かなかった」んじゃない。効いたの。

ただし——その日、市場には、ベッセントさんより声のデカい人がいたの。人というか、戦争が。

ベッセントより声がデカかったもの

同じころ、中東で、もっと物騒なニュースが飛び込んできたの。

アメリカ軍が、ホルムズ海峡にあるイランのララク島を攻撃。イランも報復して、米国とイランの軍事衝突が、また激しくなったの。

市場は「ちょっと待って。石油、どうなるの?」となった。

ホルムズ海峡は、世界のエネルギー輸送にとって、超重要ルート。ここが不安定になるだけで、原油市場はすぐ胃薬を飲み始めるの。その結果、ブレント原油という指標が2.7%上がって、1バレル=90.49ドル。90ドル復帰よ。

ガソリンスタンドから「こんにちは♡」って請求書が歩いてくる水準ね。

そして原油が上がると、今度は「物価がまた上がるかも(インフレ懸念)」が強くなる。物価が下がらないなら、中央銀行は金利を下げにくい。金利が高いままなら、ドルには追い風。だからドルが買われて、円には逆風。

つまり昨日の市場を整理すると、こうなるの。

ベッセント「日本は円高になると思います」
市場「ほう」
中東「ドーン」
原油「90ドル超えました」
市場「ちょっと待って、そっちの話しが先」

秘密情報が、ミサイルとニュース速報に順番を抜かれたの。地政学、強すぎ。

言葉は効く。でも「重力」には勝てない

ここが、昨日の市場のいちばん面白いところなの。

ベッセントさんの言葉は、ちゃんと円を動かした。だから口先介入には、ちゃんと力があるの。偉い人がマイクを持つだけで、世界中のコンピューターが一斉にドルを売ったり円を買ったりする。考えたら、すごいことよね。

あたしなんて家で愛犬に「それ食べちゃダメ!」って言っても聞いてもらえないのに、財務長官は一言で為替を動かすの。権力の差がつらいわ。

でも、言葉で動かせるのは「期待」なの。戦争、原油、インフレ、金利みたいなものは「現実」。期待は一瞬で変えられるけど、タンカーに積まれてる石油の量は、ベッセントさんがテレビで喋ったからって、増えたりしない。

だから昨日は、言葉が円を動かした。でも、地政学が市場全体を動かした。

先週は「15兆円の実弾より、FRBの金利方針のほうが強い」だった。

今週は、その先。「財務長官の言葉は効く。でも、原油90ドルという現実は、もっと重い」。市場って、最終的には現実主義なのよ。恋愛市場よりずっとまとも。

「私だけが知ってる」は、信用の前借り

ただね。ベッセントさんの「市場が知らない情報を持っている」という言葉。これ、めちゃくちゃ強いカードなの。だからこそ、何度も使えるカードじゃない。

もし9月に日本が本当に動いて円高になれば、市場は「ベッセント、本当に知ってたんだ……」となる。次に彼が何か言ったとき、市場はもっと真剣に聞くようになるでしょう。逆に、何も起きなかったら、「……で、あの秘密情報、なんだったの?」となる。

これ、信用の前借りなのよ。政治家や中央銀行の「言葉」には、残高があるの。当たれば増える。外せば減る。何度も大げさなことを言って外し続けると、最後は市場から「はいはい、通知オフ」される。

ほら、少し前にアメリカが「史上最強の対イラン制裁だ!」って大見得を切った日、原油はむしろ下がったでしょ。あれと同じ。強い言葉は、繰り返すほど効かなくなるの。

だから今回ベッセントさんが切ったのは、ただのコメントじゃない。自分の「市場に対する信用」を担保にした発言でもあるの。秘密を匂わせるって、タダじゃないのよ。恋愛でも、市場でも。匂わせには、あとで説明責任がついてくるんだから。

日本のあたしたちへ

じゃあ、このアメリカ財務長官の秘密情報と、中東のミサイルと、90ドルの原油が、日本のスーパーで牛乳を買ってるあたしたちに、何の関係があるのよ。

あるのよ。残念ながら。

日本は、エネルギーの多くを海外から輸入してるの。だから原油が上がるだけでも痛い。そこに円安が重なると、「高い原油を、弱い円で買う」ことになる。ダブルパンチよ。……ていうか最近、パンチ多すぎない?あたしたち、経済ニュース読むたびに殴られてない?

原油高は、ガソリンだけの話しじゃないの。電気代、物流費、航空運賃、プラスチック製品、食品の輸送コスト。いろんなところから、しれっと生活費に入り込んでくる。しかも原油高がインフレを押し上げれば、アメリカの金利が高止まりする可能性も出てくる。すると、またドルが強くなりやすくて、円には逆風。

だから、「ベッセントが円高って言った!円高になる!」だけ見てちゃダメなの。市場は、そんな一話完結のドラマじゃない。登場人物が多すぎる大河ドラマよ。FRBがいて、日銀がいて、財務省がいて、ベッセントがいて、イランがいて、原油がいて、ホルムズ海峡まで出演してる。もう相関図が必要なレベル。

だからこそ、偉い人の一言で、資産を慌てて売ったり買ったりしないこと。言葉を見る。市場の反応を見る。そして最後に、現実が本当に変わったのかを見る。この順番よ。昨日のベッセント発言は、たしかに円を動かした。でもその横で、原油は90ドルを超えてた。ニュースは一個ずつ来るけど、市場では、全部が同時に起きてるの。

今日のまとめ

  • ベッセント米財務長官が「市場が持っていない情報を持っている」と発言し、日本政府と日銀が円高につながる措置を取るとの見方を示した
  • 発言は実際に市場を動かし、円は対ドルで一時159円台後半まで上昇。つまり「口先」はちゃんと効いた
  • 一方、中東では米軍がイランのララク島を攻撃し軍事衝突が再燃。原油供給への懸念からブレント原油は2.7%上昇し90.49ドルへ
  • 米株も下落。市場全体では、地政学・原油・インフレ・金利への警戒が勝った
  • つまり昨日は「言葉が無視された」のではない。「言葉は円を動かした。でも地政学という現実が、市場全体を動かした」
  • 「市場が知らない情報を持っている」は強力なカード。それが本当に円高につながるか、ベッセント自身の信用もこれから試される

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

偉い人の言葉は聞く。でも、財布を動かす前に、現実を見る。市場だって、口より行動を見てるのよ。……恋愛より原油のほうが、まだチャートで見えるだけマシだけどね。

A secret can move the market. Reality decides how far.


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※本記事はブルームバーグ、ロイター、CNBC、日本経済新聞、共同通信の公開情報をもとに構成しています。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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