日銀31年ぶりの1.25%へ|利上げしたのに円は157円台まで「円安が加速」した皮肉

日銀が31年ぶりの高水準まで利上げしたのに日米金利差が縮まらず円が逆に157円台まで下落した皮肉を象徴する、上向きに伸びる日本の金利階段の隣でさらに高く駆け上がる米国のエスカレーターと下を向く円のマークを重ねた、バーガンディとチャコール基調のシネマティックで絵画的なデジタルイラスト 経済

今週ずっと追いかけてきた金利のドラマが、今日、最終回を迎えたの。

水曜、アメリカ(FRB)が3年ぶりに利上げした。そして今日金曜、日本(日銀)も利上げ。政策金利を1.25%へ、31年ぶりの高さまで引き上げたの。「日米そろって金利を上げた週」——今週は、そういう歴史的な一週間だった、というわけ。

でも、いちばんの皮肉はここから。

日本が31年ぶりの金利まで上げたのに——円は、上がるどころか、下がったの。しかも今日の午後、植田総裁の記者会見を経て、一時1ドル157円台まで、むしろ円安が”加速”した。「え、今日って利上げの日よね?」。そう。したの。31年ぶりの高さまで。なのに円は売られた。

今日は、この”教科書が完全に裏切られた”一日を、ほどいていくわね。

まず、日銀が何を決めたか

日銀は今日、政策金利(正確には「無担保コール翌日物」という、銀行同士がお金を貸し借りするときの金利ね)を、0.25%引き上げて、1.25%程度にすると決めた。

これ、すごく大きな節目なの。1.25%という金利は、1995年以来、約31年ぶりの高さ。Windows 95が出た年よ。日本の金利、インターネット老人会から帰還してきた、くらいの久しぶりさ。日本はずっと「金利ほぼゼロ」の世界で生きてきたから、この水準は、多くの人にとって”生まれて初めて見る、金利のある日本”に近いのよ。

しかも、前回の利上げが今年6月。たった3カ月での再利上げは、2024年3月にマイナス金利をやめて以降、いちばん短い間隔。6月に上げて、9月にまた上げる。日本の金利、30年間ほぼ寝てたくせに、起きた途端、ちょっと歩くの速いのよね。

そして「賛成7・反対2」が、円安の引き金を引いた

ここが、今日の隠れた主役なの。

一昨日のFRBは、12人全員が利上げに賛成する「12対0」の完全一致だった。それに対して、今日の日銀は、9人の政策委員のうち、賛成7・反対2。2人が「利上げ反対(据え置き)」に回ったの(浅田統一郎さんと佐藤綾野さん)。

この2人、いずれも今年から新しく審議委員になったメンバーで、もともと金融緩和に前向き(利上げには慎重)とみられてた人たち。政府の人選に、利上げに前のめりでない高市政権の政策志向が反映された、との見方も出てた(政府側は「識見や経験に基づく人選」としてる)。

そして——この「反対2票」が、今日の円安を加速させた材料の一つ、とみられてるの。市場はこう読んだ。「利上げはした。でも中で2人も反対してるってことは、日銀、この先そんなにガンガンは上げられないんじゃない?」。つまり、”利上げの中身が、思ったよりハト派(慎重)だった”と受け取られた。利上げした当日に、その利上げに含まれてた”反対”が、円を下げる——二重の皮肉よ。FRBが「12人で肩を組んで金利上げるぞー!」だったのに対し、日銀は後ろで2人が腕組みしてる。市場は、その腕組みを見逃さなかったの。

しかも今日は、援軍が誰もこなかった。朝に出た8月の物価(コアCPI)は前年比+1.7%で、予想の1.8%を下回って、むしろ鈍化。「物価、ちょっと弱いわね」という数字が、利上げの数時間前に出てたの。市場から見れば——「物価はやや弱い」「利上げに反対が2人」「アメリカの金利はまだずっと高い」。はい、円さん、三方向から殴られております。利上げの日なのに、味方が一人もいなかったのよ。

本題。なぜ利上げしたのに、円は157円台なの?

ここが今日いちばん大事なところ。ゆっくりいくわね。

普通、教科書ではこう習うの。「国が金利を上げる → その国のお金を持ってると利息がおいしくなる → みんなそのお金を買う → 通貨が高くなる」。だから「日本が利上げ → 円高」になるはず、なのよ。

なのに現実は、逆。理由は2つ重なってる。

ひとつは、さっきの「反対2票」で、日銀の今後の利上げに慎重ムードが漂ったこと。もうひとつは、今週ずっと追ってきた——アメリカよ。大事なのは、上げ幅そのものじゃないの。日本は0.25%上げた。でも、アメリカも同じ週に0.25%上げた。日本「1.25%になりました!」、アメリカ「こっち、3.75〜4.00%です。あと、まだ上げるかも」……そりゃ市場も電卓を置くわ。

為替を見るうえでは、金利そのものだけじゃなく、「これから日米の金利差がどうなるか」が、ものすごく重要なの。日本が階段を1段上っても、アメリカも同じ日に1段上って、しかも「まだ上るよ」と言った。差は、縮まらない。同じ速度で、逃げられてるの。

火曜に「ベッセント財務長官が胴元だ」と書き、木曜に「FRBが12対0で利上げした」と書いたわよね。今日の円安は、その2つの伏線の、答え合わせなの。

日本はちゃんと利上げした。間違ってない。ただ、同じ週にアメリカも動いて、しかも日銀の中には慎重派が2人いた。市場は、努力賞をくれないのよ。

植田会見と株の意外な反応

決定のあと、午後3時半から植田総裁の記者会見があったの。市場が聞きたかったのは、たった一つ。「次は、いつ、どこまで上げるの?」。

植田さんは、「物価情勢次第で、連続利上げも利上げ幅の拡大も、特定のやり方を排除しない」と含みは持たせつつ、急な引き締めや市場へのショックは避けて慎重に進める、という姿勢も強調した。会見の最中、タカ派に聞こえた瞬間には、円が一時156円台半ばまで戻す場面もあったの。でも大勢は、「追加利上げの可能性は残したけど、急いで引き締めるほどじゃないわね」との受け止めが優勢に。ドル円は157円台まで上昇(円安)した。植田「上げないとは言ってません」、市場「いつ?」、植田「データを見ながら」、市場「だから、いつ?」——為替市場、付き合って3カ月目の彼女くらい詰めてくるのよ。

利上げした当日に、次の利上げを催促される植田さん。中央銀行の世界に、余韻という文化はないのよね。政策発表というより、もはやNetflix。最終回の日に、もう次シーズンの予告を見せられてるの。

一方で、もっと面白いのが株。日経平均は882円高の65,018円で3日続伸。日銀の発表後には、一時1,300円以上も上げたの。市場では、日米の金融政策イベントを無事通過した安心感に加えて、円安(輸出企業の採算改善)と、半導体・AI関連への買いが追い風になったとみられてる。

ただし、ここにも罠があるの。TOPIXは、下がってるのよ。東証プライムでは、値下がり銘柄のほうが値上がりより多かった。つまり「日本株みんな大喜び!」ではないの。日経平均は、株価水準の高い半導体株(東京エレクトロンとか)の影響を受けやすい計算方法だから、そういう値がさ株が強いと、指数だけ派手に上がって見える。日経平均「+882円です!」、日本株全体「いや、こっち結構下がってますけど」——指数まで今日、教科書を裏切ってくるのよ。

日本のあたしたちへ

今日は、日本に住むあたしたちにとって、けっこう大事な節目の日。3つだけ、持って帰ってね。

① 住宅ローンの変動金利は上がる方向へ

いちばん直接効くのが、これ。変動型の住宅ローンは、日銀の政策金利に連動して動くから、今日の利上げで、この先じわり上がる方向に圧力がかかる。ただし、即日・一律にではないの。多くの変動型では、金利を半年ごとに見直す。一方で、返済額を5年間据え置く「5年ルール」などの有無は、金融機関や商品によって違う。政策金利は今日上がるけど、住宅ローンへの反映は、契約によって後からじわっと来る——請求書だけ時差でくるタイプの怖さ、ね。変動で借りてる人は、自分の契約の”見直しルール”を、一度確認しておくといいわ。

② でも、預金の金利も上がる

利上げは、借りてる人には逆風だけど、預けてる人には追い風なの。金利が上がれば、各行が普通預金や定期預金の金利を引き上げる方向に動く可能性が高い。この30年、日本の預金は「置いてても、ほぼ増えない」のが当たり前だった。金利のある時代に入れば、”ただ預けておくお金”にも、少しは利息がつくようになる。……ただし、銀行が利上げ分を律儀に100%預金者へ渡してくれるとは限らない。そこは銀行。慈善団体じゃないから。それでも、自分の預金口座の金利、久しぶりに見てみる価値はあるわ。預金者「金利ある時代キター!」、住宅ローン民「帰って」——同じ利上げでも、立場で真逆なのよ。

③ 「日本が利上げ=円高」の単純式は、いったん捨てる

今日がまさにそうだったように、「利上げ=円高」は、教科書では正解でも、市場では2問目が出るの。「で、アメリカは? 日銀の中は一枚岩?」って。金融市場、小学生ドリルの顔して、急に東大二次試験なのよ。円相場の見方は割れてる。アメリカの追加利上げや日米金利差、それに原油高が円安の圧力として残る一方、日銀の追加利上げやポジション解消が円高の材料になる、という声もある。だから「円高になるまで全部待つ」んじゃなくて、”為替が思うように動かなかった場合”も含めて、旅行やドル購入の計画を立てておくのが賢いわ。為替予想は、半年後に読み返すと、だいたい専門家の合同黒歴史展になるから。

今週、日米が両方、金利を上げた。歴史に残る一週間だったと思う。でも、あたしたちの暮らしにとって大事なのは、ニュースの派手さじゃなくて、その先。住宅ローンはどうなるか。預金は。旅行の計画は。円はどっちに行くのか。世界の中央銀行がどれだけ大きく動いても、あたしたちにできるのは、変わらず、自分の手札を静かに整えておくこと。31年ぶりの金利がある日本で、慌てず、でも、ちゃんと目を開けて。それだけで、十分よ。

今日のまとめ

  • 日銀は9/18、政策金利(無担保コール翌日物)を0.25%引き上げ、1.25%程度とすることを決定。1995年以来、約31年ぶりの高水準。6月会合以来3カ月ぶりで、2024年3月のマイナス金利解除以降では最短の利上げ間隔
  • 採決は賛成7・反対2(浅田統一郎氏、佐藤綾野氏が据え置きを主張)。2人はいずれも今年就任の新メンバーで利上げに慎重とみられ、高市政権の政策志向を反映した人選との見方も(政府は識見・経験に基づくと説明)。この反対票が今後の利上げペースへの疑念を強め、円売り材料の一つに。さらに同日朝の8月コアCPIが+1.7%(予想1.8%)と鈍化したことも重なった
  • 最大の皮肉は、31年ぶりの利上げにもかかわらず円が下落したこと。決定後、ドル円は156円前半から157円台へ円安が加速(一時157.5円台)。植田総裁の会見も「物価次第で連続利上げも幅拡大も排除しない」と含みは持たせたが、市場は慎重と受け止め円売りで反応
  • 円安のもう一つの理由は日米金利差。日本も米国も同じ+0.25%だが、米国は3.75〜4.00%で追加利上げ観測もあり絶対水準の差が大きい。金利は「高さ」より「差」で動くため、日本が上げても差が縮まらず円は報われず
  • 株は逆の反応。日経平均は利上げ決定後に上げ幅を拡大し882円高で3日続伸(終値65,018円、一時1,300円超高)。金融政策イベント通過の安心感と円安・半導体買いが追い風。ただしTOPIXは反落し、プライムでは値下がり銘柄が値上がりを上回ったため「日本株全面高」ではない。10年債利回りも上昇
  • 日本への影響:①変動型住宅ローンは上昇方向(反映時期・5年ルール等の有無は銀行・商品で差)②預金金利も上がる方向だが銀行が全額還元するとは限らない③「日本の利上げ=円高」は単純には成立せず、為替の見方は割れる。円高前提の計画は見直しも視野に

日本は利上げした。円は下がった。株は上がった。でもTOPIXは下がった。今日の市場に必要だったのは、経済学の教科書じゃなくて——相関図よ。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

Japan hiked. America hiked. The yen did the math.


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※本記事はBloomberg、日本経済新聞、Reuters、みんかぶ、外為どっとコム、ダイヤモンド・オンライン等の公開情報をもとに構成しています。金利・為替・株価などの数値・見通しは報道時点のものであり、時間帯により変動します。今後の金融政策は確定ではありません。投資判断はご自身の責任で。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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