世界が「利上げ」を警戒する週に、たった一人「下げろ」と叫ぶ人がいる|トランプ vs 自分で選んだFRB議長

世界の中央銀行が利上げに傾く週にトランプ大統領だけが利下げを叫び自ら指名したFRB議長と衝突する構図を象徴する、上向きの金利矢印に囲まれながら一人だけ下向きの矢印を掲げる人物と薄暗い金融街のビル群を重ねた、バーガンディとチャコール基調のシネマティックで絵画的なデジタルイラスト 経済

今週は、世界のお金の流れが、まとめて動くかもしれない一週間なの。

水曜にアメリカ(FRB)、木曜にイギリス(BOE)、そして週末に日本(日銀)。世界の主要な中央銀行が、立て続けに「金利をどうするか」を決める。しかも今、空気は明らかに「利下げ」より「インフレ、まだ死んでなくない?」に傾いてる。

ところが、その空気のなか、たった一人、正反対のことを叫んでる人がいる。アメリカ大統領、ドナルド・トランプ。「アメリカの金利は、世界でいちばん低くあるべきだ」って。しかも面白いのが——彼が「金利を上げそうな」相手が、ほかならぬ自分で選んだFRB議長、という点なの。今日は、この奇妙な対決を、ほどいていくわね。

まず、トランプが何を言ったか

日曜、トランプはアイルランドにいたの(自分のゴルフ場で開かれてた大会を観戦してた)。そこで、FRBが今週利上げするかもしれない、という話しを振られて、こう言い放った。米国はこれだけ強いのだから、他国がどんな計算式を使っていようと関係なく、世界でいちばん低い金利を払うべきだ——という趣旨のことを。

要するに、「アメリカは世界最強なんだから、借金の利息(=金利)も世界一安くて当然だろ」という理屈。

経済学者:「インフレ率、雇用、期待インフレ、実質金利を見て……」→トランプ:「アメリカ強い。だから金利安くしろ」。モデルが違うの。というか、モデルがないの。

金利が低ければ、住宅ローンも企業の借入も軽くなって、景気には気持ちいい。しかも今、11月には中間選挙が控えてる。物価高や借入コストへの不満が選挙の逆風になるなか、政権にとって低金利は、政治的にも歓迎したい話しなのよ。

トランプ政権内からも、FRBに低金利を求める声は、繰り返し出ている。ホワイトハウス「FRBの独立性は尊重します」→同時にホワイトハウス「で、利上げはしないよね?」。

独立は尊重する、ただし希望進路は伝える。進路指導の先生か。

ところがFRBは逆を向いている

ここが、今週いちばんの見どころ。

そのFRBを率いるウォーシュ議長は、金利を「上げる」方向へ迫られる局面に入ってるの。先週このブログで書いたとおり、金曜のCPI(消費者物価)でコアのインフレが予想より熱かった。ウォーシュさん自身、「インフレ抑制には、まだやるべき仕事がある」というタカ派寄りの姿勢を示してる。7月の会合ではまだ「据え置き」が多数派だったのに、今や市場はほぼ、「先生、もう利上げするって知ってます」の顔をしてる。CPI後、市場が織り込む利上げ確率は、9割近くまで跳ね上がったの。FOMC、まだ答案を出してないのに、市場が先に採点してるのよ。

そして、ここがドラマなの。ウォーシュ議長を指名したのは、ほかでもないトランプ本人。今年5月に議長に就任した。トランプがウォーシュに「低金利寄りの政策」を期待していたことは、就任前から明らかだった。

……なのに、いざ蓋を開けたら、そのFRBが、任命者の要求と正反対の「利上げ」に向かってる。自分で薔薇を渡した男が、初回放送からインフレとデートしてるの。

トランプ:「君を選んだのは僕だよね?」

ウォーシュ:「でも私、物価安定と向き合いたいの」。

The Fed Bachelor、第一話から修羅場よ。

トランプが欲しかったのは「低金利にしてくれるFRB議長」。ところが届いた商品を開封したら、インフレファイターが入っていた。返品期限:ありません。

ちなみにトランプは、前の議長(パウエルさん)には容赦なく罵倒を浴びせてたけど、ウォーシュさんには珍しく気を遣ってて、「いい仕事をしてる」と持ち上げてもいる。自分が選んだ手前、真正面から叩けない。この微妙な距離感も、なんだか人間くさいでしょう。

「上げれば大統領が怒る、上げなければ市場が失望する」

じゃあ、ウォーシュ率いるFRBはどうするのか。実はこれ、どっちに転んでも痛い、究極の板挟みなの。

利上げすれば、任命者であるトランプ大統領の怒りを買う。かといって、利上げを見送れば——市場から「政治圧力を意識したのでは?」と疑われ、FRBのインフレ対応への信認(=独立して正しい判断をする、という信頼)を傷つけるリスクがある。

実際、「これだけ利上げを織り込んだ状態で見送れば、長期金利が跳ねる可能性がある」との指摘も出てる。

上げる→大統領が怒る。上げない→債券市場が怒る。選択肢A:怒られる。選択肢B:別の人に怒られる。

新任管理職あるあるの、最終形よ。しかも中央銀行にとって、この「信認」は、お金より大事な資産なの。「あの中銀は、政治家に言われて金利を動かす」と思われた瞬間、その国の通貨や国債への信頼が揺らぐから。就任から4か月、いきなり最大の試練ね。

そして、これは「世界同時」の空気なの

もう一つ大事なのが、これがアメリカだけの話しじゃない、ということ。ただし——「世界が一斉に利上げ」ではないの。ここ、正確に見ておくわね。

  • ECB(ヨーロッパ):先週9月10日に、すでに25bp利上げ済み
  • FRB(アメリカ):今週、利上げ観測が急上昇
  • 日銀(日本):今週、利上げが有力視
  • BOE(イギリス):今週は据え置き予想。ただし11月にも動く芽
  • カナダ:9月に据え置き(7会合連続)

つまり、全員が一斉に上げてるわけじゃない。でも、世界の中央銀行のあいだで、「利下げ」より「インフレ再燃への警戒」が、はっきり前面に出てきた——これが今週の本当の景色なの。世界の中央銀行が突然、同じグループLINEで「ねえ、インフレまたきてない?」とザワつき始めた感じ。

ECB「上げました」、FRB「上げるかも」、日銀「上げるかも」、BOE「今回は待つ。でも見てる」、カナダ「とりあえず据え置き」——そして、トランプ「下げろ」。会議の議題を、一人だけ読んでないのよ。

日本のあたしたちへ

「アメリカの大統領と議長のケンカでしょ。日本には関係ないわ」——そう思うわよね。でも、これがけっこう、あなたのお財布に効くの。2つだけ持って帰ってね。

ひとつめ。今週は、あなたの生活に直結する数字が、続けて動く可能性があるということ。日本の日銀は、今週(9/17〜18)の会合で、政策金利を1.25%へ引き上げるとの見方が有力。実現すれば、約31年ぶりの水準よ。背景は、名目の賃金の伸び(春闘は約30年ぶりの高い賃上げ率)と基調的な物価上昇。ただし——ここ大事——物価を差し引いた「実質」の賃金は、まだほとんど増えてないの。日銀が見てるのは前者、あたしたちの財布が感じてるのは後者。同じ「賃金」でも、まるで別の話しよ。

そして、もし利上げされれば、いちばん響くのは住宅ローンの金利。ただし——日銀が25bp上げたからといって、翌朝ポストを開けたら銀行から「おめでとうございます。返済額、爆上げです♡」と手紙がくるわけじゃないの。でも、方向は確実に変わる。だから今見るべきは、ニュース速報より、自分のローン契約(変動か固定か)なのよ。

そしてFRBと日銀が同じ週に政策を決めれば、為替は振れやすい。ただし「日銀が利上げした=円高」と、単純にはいかないの。市場がすでにどこまで織り込んでいたか、そして両中銀が「この先どうする」と語るかで、円高にも円安にも振れうる。為替市場って、決定そのものより「で、次どうすんの?」に、異常にうるさいの。彼氏だったら、面倒くさいタイプよ。

ふたつめ。「中央銀行の独立性」という言葉を、覚えておいてほしいの。今アメリカで起きてるのは、「政治家が中央銀行に、金利を下げろと公然と迫る」という構図。「中央銀行は政治から独立しています」という制度の横で、大統領が「もちろん独立していい。で、下げるよね?」と立ってる。自由恋愛を認めながら、結婚相手だけ指定してくる親みたいなものよ。もしこれが通ってしまうと——中銀が政治の言いなりで金利を動かすようになると、その国の通貨やお金への信頼が、長い目で揺らいでいく。これは対岸の火事じゃないの。日本でも、政権が日銀にどう向き合うかは、円の信頼に直結する話。だから「政治家 vs 中央銀行」というニュースは、遠い政治ドラマじゃなくて、あなたの持ってる円の”信用力”の話でもある、と知っておいてね。

今週、世界の中央銀行が続々と金利を決める。そのなかで、アメリカでは大統領と、彼が選んだ議長が、正面からぶつかろうとしてる。慌てて何かする週じゃないわ。ただ、9月16日(米FRB)、17日(BOE)、17〜18日(日銀)——このカレンダーに丸をつけて、「利上げか、据え置きか」「トランプはどう出るか」を、ちょっと気にしておく。それだけで、来週ニュースが騒いだとき、あなたは落ち着いて見ていられるから。

今日のまとめ

  • トランプ大統領が日曜(アイルランド訪問中)、FRBの今週利上げの可能性を問われ「米国は世界一強いのだから、他国の計算式に関係なく、世界一低い金利を払うべきだ」という趣旨を発言。11月の中間選挙を控え、政権にとって低金利は政治的に歓迎したい話
  • トランプ政権内からもFRBに低金利を求める声は繰り返し出ているが、ホワイトハウス経済顧問はFRBの独立性を尊重するとも説明。トランプは自ら指名したウォーシュ議長本人への直接批判は避け「いい仕事をしている」とも
  • ウォーシュ率いるFRBは、金曜の熱いコアCPIを受け利上げを迫られる局面。ウォーシュは「インフレ抑制にやるべき仕事がある」とタカ派姿勢。7月は据え置きが多数派だったが、CPI後の市場の利上げ織り込みは9割近くへ。トランプが低金利を期待して指名した議長が、任命者と逆を向く皮肉な構図
  • FRBは「利上げすれば大統領の怒りを買い、見送れば政治圧力を疑われ信認を損なう」板挟み。中銀の独立性・信認が問われる局面
  • 今週はG7の中銀が相次いで決定(9/16 FRB、9/17 BOE、9/17〜18 日銀)。ECBは9/10に25bp利上げ済み、FRBと日銀で利上げ観測が強い一方、BOEとカナダは足元で据え置き。G7が一斉利上げしているわけではないが、世界的に「インフレ再燃への警戒」が再び強まっている
  • 日銀は今週1.25%への利上げが有力(約31年ぶり水準)。賃金上昇・基調物価に加え、円安やイラン戦争のエネルギー高も後押し。利上げなら住宅ローン(特に変動金利)にじわり波及。日米が同週に動けば為替が振れやすいが「日銀利上げ=円高」と単純ではない
  • 教訓:今週は世界の金利が動く節目。9/16 FRB・17 BOE・17〜18日銀に注目。政治 vs 中央銀行の構図は、遠い政治劇ではなく通貨の信用力の話

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

Everyone brought inflation data. Trump brought a demand.


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※本記事はBloomberg、CNBC、Fortune、Reuters、The Japan Times、swissinfo、Vantage Markets等の公開情報をもとに構成しています。金利・為替・利上げ確率などの数値・見通しは報道時点のものであり、確定ではありません。各中央銀行の決定内容・日程は変更される場合があります。投資判断はご自身の責任で。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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