円、158円台へ逆戻り|日本も利上げしたのに全部吹き飛ばす「強すぎるアメリカ」

日本が31年ぶりに利上げしても米国の強い景気と利上げ継続観測でドル全面高となり円が158円台へ逆戻りした構図を象徴する、広いプールをクロールで懸命に前進する小さな泳ぎ手とその行く手に逆から迫る巨大な波を対比させた、バーガンディとチャコール基調のシネマティックで絵画的なデジタルイラスト 市場

先週、このブログでずっと不思議なことを追いかけてたわよね。「日本も利上げした。アメリカも利上げした。なのに、円は下がる(円安)」。

今週、その構図が、さらにハッキリしたの。円は、再び1ドル158円台へ。先週、日銀が政策金利を31年ぶりの1.25%まで上げたのに、円高になるどころか、円安。「日本、金利上げました!」「アメリカ、もっと上げるかもです!」——はい、努力賞だけ置いときますね、という展開よ。

犯人を、ひとりに絞るなら。「日本が弱い」んじゃないの。アメリカが強すぎて、FRB(米中央銀行)がまだ利上げを続けそうだから。今日は、この”風が全部アメリカから吹いてる”状況を、5つのニュースを1本の線でつないで、解説していくわね。

すべての起点:アメリカの経済が「強すぎた」

今回の連鎖の、いちばん最初のドミノが、これ。9月23日に出た、アメリカのPMIという指標なの。

PMI(購買担当者景気指数)っていうのは、企業の現場の人たちに「景気、良い? 悪い?」と聞いて数字にした、景気の体温計みたいなもの。50を超えれば「良い」、下回れば「悪い」。その9月の速報値が、なんと58.4。2021年7月以来、5年超ぶりの高さなの。

PMI 58.4。50を超えれば「景気拡大」なのに、58.4よ。アメリカさん、景気の健康診断に来たら、先生に「元気すぎます。ちょっと座ってください」と言われるレベル。しかも厄介なのが、売上だけじゃないの。新規の注文も増える。雇用(採用)も、4年以上ぶりの速さで増える。そして——企業が払うコスト(仕入れ値)も、約4年ぶりの速さで上がってた。景気「絶好調です!」、インフレ(物価高)「私もです!」。……お前は、ついてくるな、なのよ。景気が良すぎて、インフレまでぶり返す。これが、今回の全ての始まり。

ドミノ2枚目:「FRB、10月ももう一回利上げするかも」

強い景気+ぶり返すインフレ。この2つがそろうと、市場はこう考えるの。「FRB、これはもう一回、利上げするしかないわね」。

思い出して。FRBは、つい先週(9/16)、3年ぶりの利上げをしたばかり(政策金利を3.75〜4.00%へ)。市場は当初、「まあ、当分おしまい?」と半信半疑だった。ところが、この爆強PMIで、空気が変わったの。10月28日の次の会合で、2会合連続の利上げがある——その確率が、PMI発表前の”5割前後”から、発表後は”7割”方向へ、ぐっと切り上がった(数字は調査機関で幅があるけど、方向は明確に「上げるかも」へ)。

先週、上げたばっかりなのよ。FRB「利上げしました」→市場「これで一旦終了?」→アメリカ経済「PMI 58.4でーす🙋」→FRB「……」→市場「もう一回ですね」。景気が良すぎて、金利を上げられる。なんという、贅沢な悩みかしら。(ちなみに、9月会合でFRB自身が”年内あと1回”の利上げを示唆してたので、PMIだけで突然生まれた話しでもないの。)

ドミノ3枚目:アメリカの金利が、約20年ぶりの水準に

その観測が、アメリカの国債の利回り(金利)を、跳ね上げたの。

なかでも象徴的なのが、5年もの国債。利回りが一時5.03%まで上昇して、2007年以来、約20年ぶりに5%台へ。2023年の高値(4.99%)すら超えたの。長めの10年ものも、5%を超えてきた。金利が「20年ぶり」の世界に、入ったのよ。

アメリカ国債、5年で、利回り5%。株じゃないの。暗号資産でもないの。アメリカ政府にお金を貸すだけで、5%。そりゃ世界のお金も、「すみません、円ちゃん。あなたが嫌いなわけじゃないのよ。でも、向こうは5%なの」ってなるわ。恋愛じゃないの。利回りなの。こうして、ドルが、あらゆる通貨に対して買われる——「ドル全面高」が起きたの。

ドミノ4枚目:円は158円台へ

そして、最後のドミノが、円。「ドルが全面高」ということは、その裏側で、円は売られる。ドル円は、158円台まで下落したの。

ここで、先週の復習ね。為替は、「今日の金利」だけじゃなく、「これから金利差がどう動くか」で動くの。先週、日本は金利を1.25%に上げた。えらい。これだけなら、日米の金利差は縮まるはずだった。ところが横を見たら、アメリカが「あ、うち、次も上がるかも」と、エスカレーターに乗っていた。市場が見てるのは、その”これから”。日本が1.25%まで上げても、アメリカでは「次も、その次も」が意識されて、米5年債は5%突破。日本、頑張った。アメリカ、頑張りすぎた。円、巻き込まれた——そういうことなの。

先週「レートチェック(当局が電話一本で牽制)」までやったのに、その効果すら、この”強すぎるアメリカ”の前では、かすんでしまった。

おまけのドミノ:原油と日本株

さらに厄介なのが、エネルギー。ブレント原油は、一度100ドルを割ったものの、イラン情勢とホルムズ海峡をめぐる不透明感から、再び上昇。ディーゼル(軽油)など石油製品の供給も、逼迫してる。つまり日本から見ると——ドル高です。円安です。原油も高いです。……ちょっと待って。輸入業者に、何の恨みがあるの。

一方で、意外なのが日本株。日本は9月21〜23日が休日(シルバーウィーク)で市場がお休みだったの。その間、アメリカではAI関連株への期待でナスダックが最高値をつける場面もあって、日本株には、AI株高と円安が、支援材料になりうる。ただし、米金利の急騰は、株の割高感には逆風。AI「株、上げます」、円安「輸出株、上げます」、米金利「ちょっと失礼、株の首、締めます」。

市場、登場人物が多いのよ。

日本のあたしたちへ

「アメリカの景気とか金利とか、遠い話し」——そう思うわよね。でも今回ほど、それがまっすぐ、あなたの財布につながってる話しよ。3つだけ持って帰って。

① 円安→輸入物価、また上がるかも

158円台の円安は、あたしたちの生活に、じわっと効いてくる。日本は、エネルギーも食料も、多くを輸入に頼ってるから。円が安いと、同じものを買うのに、より多くの円が要る。しかも今、その輸入する原油まで上がってる。円安はニュース番組では「為替市場」だけど、家に入ってくると、名前を変えるの。電気代。ガソリン代。スーパーの値札。……為替、勝手に家庭訪問してくるの、やめてほしいわ。この秋から冬、また値上げの波がくるかも、と心の準備だけはしておいて。

② でも、円安は”全部悪”じゃない

一方で、円安には良い面もあるの。あなたの新NISAに、S&P500やオルカンのような外貨建て資産が入ってるなら、現地の資産価格が同じという前提では、円安は、その円換算の評価額を、押し上げる方向に働く。ドルの資産が、円で見ると増えるから。日本株も、円安が追い風。スーパーでは円安に殴られ、NISAを開いたら円安に慰められる。同じ円安なのに、玄関によって態度が違うの。経済って、二重人格なのよ。だから「円安=損」と単純に思い込まないで。あなたのお金が”どこにあるか”で、円安は敵にも味方にもなるの。

③ 「強いアメリカ」は、いつまで続く? を見ておく

今回の円安の”大元”は、アメリカの景気が強すぎること。ということは、この先の分かれ道は、「アメリカの強さが、いつまで続くか」なの。もし今後、アメリカの景気が減速し始めたら、利上げ観測は後退して、金利が下がり、ドル安・円高に振れる可能性がある。逆に、強さが続けば、円安も続く。だから、円高を待って毎朝ドル円だけ見てても、答えは半分しか分からないの。見るべきは、その後ろ。米景気→インフレ→FRB→米金利→ドル→円、という流れ。円ちゃん本人より、円ちゃんを振り回してる”アメリカ彼氏”の機嫌を見る。面倒な恋愛だけど、為替って、だいたいそういうものなのよ。

今日のまとめ

  • ドル円は9/23に158円台へ下落。158円台自体は日銀利上げ日の9/18にも一度つけており「再び」の水準。先週の日銀利上げ(31年ぶりの1.25%)後も円安が続き、主因は日本側より米国経済の強さと利上げ継続観測による「ドル全面高」
  • 起点は9/23発表の米9月PMI速報。総合58.4は2021年7月以来(5年超ぶり)の高水準で、製造業57.0・サービス58.7。新規受注・雇用が加速する一方、投入コスト(インフレ)も約4年ぶりの速さで上昇
  • 強い景気+ぶり返すインフレを受け、10/27-28のFOMCでの追加利上げ観測が上昇(発表前の5割前後から7割方向へ、数値は調査機関で幅あり)。FRBは9/16に3年ぶり利上げをしたばかりで、9月会合でも年内あと1回を示唆していた
  • 米金利が急騰。5年債利回りが一時5.03%と2007年以来約20年ぶりの5%台(2023年の4.99%も上回る)、10年債も5%超。5年債入札の需要は低調。金利上昇がドルを全面高に押し上げ、円を158円台へ
  • 原油(ブレント)はイラン情勢・ホルムズ海峡の不透明感から再び上昇し、ディーゼル等の供給も逼迫。日本株は連休(9/21-23)明けで、AI株高・円安が支援材料になりうる一方、米金利急騰は株の割高感に逆風
  • 日本への影響:①円安+原油高で輸入物価(ガソリン・電気・食品)に再上昇圧力②ただし円安は外貨建て資産(米国株)の円換算評価や日本株には追い風で、立場により敵にも味方にも③円安の大元は「強い米経済」。円高転換を待つなら見るべきは日本より米国の経済指標

先週、日本は31年ぶりの利上げをした。ちゃんと、前に進んだ。でも、世界というプールの中では、日本がクロールで頑張っても、アメリカという大波が、逆から押し寄せてくる。今回158円台を押した最大の風は、日本からというより、アメリカから吹いてる(もちろん、日銀の慎重姿勢も円には逆風だけどね)。この構図を知っておくだけで、ニュースの「円安!」に、いちいち動揺しなくて済むの。大事なのは、波を止めることじゃなくて、自分がどっち向きに浮いてるかを、知っておくこと。輸入で損する分と、投資で得する分。あなたの家計の”収支”を、静かに見ておきましょ。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

Japan kept swimming. America sent a bigger wave. The yen got swept away.

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※本記事はBloomberg、S&P Global、Reuters、Trading Economics、ActionForex等の公開情報をもとに構成しています。為替・金利・株価・原油などの数値は報道時点の速報値であり、時間帯により変動します。PMIは速報値で確報で改定される場合があります。利上げ確率は市場が織り込む見通しで、調査機関により差があり、確定ではありません。投資判断はご自身の責任で。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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