中間選挙が終わったら、何が起きる?|米イラン戦争報復は「場所を選ばない」、原油高と日本のガソリンの裏側

画面の左半分には夕暮れのホルムズ海峡で黒煙を上げて傾くタンカーと岩だらけの海岸線、右半分には同じ夕焼けの下で給油ノズルが差し込まれた白い軽自動車が止まる日本の住宅街のガソリンスタンドが描かれ、二つの景色が一本のパイプでつながる映画的な絵画 国際情勢

離婚調停って、知ってる? 夫婦が直接顔を合わせず、間に入った調停委員を通して話し合う場よ。

調停室では「前向きに検討します」。でも、家に帰れば弁護士と次の手を相談している。相手も相手で「話し合う意思はあります。ただし、大事な予定が終わってから」。

今のアメリカとイランは、まるでこれ。片手は握手のために差し出している。でも、もう片方の手はこぶしを握ったまま。

しかも、この夫婦、家の中だけでケンカしてくれない。隣の家の窓ガラスは割るわ、道路は封鎖するわ、近所のガソリン代まで上げるわ。当事者でもない日本に、なぜか請求書が届く。

離婚するなら勝手にしてちょうだい。ただし、町内会全員を巻き込むのはやめていただきたいわ。

そして、その「大事な予定」というのが、11月3日のアメリカの中間選挙。先日の備蓄の記事で「点は本物、線は噂」と書いたけれど、今日はその本物の点のほうを、最新の地図にして整理するわよ。

この数日、何が起きたの?

10月31日、イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師が、軍の幹部を集めて指示を出した。アメリカとイスラエルとの戦いの再開に備えて、報復の選択肢を広げろ、と。ブルームバーグによると、ハメネイ師は「あらゆる段階、あらゆる種類の脅威に、地理的な制限なしで、即座に効果的に対応しなければならない」と述べ、アメリカとイスラエルの「あらゆる形のある資産、形のない資産」を対象にした標的のリストの更新を命じたの。軍の参謀総長も「攻撃が始まるのを待たずに、対応の時期と方法を選ぶ」と話しているわ。

ところが同じ日、イランのアラグチ外相は、イランの代表団がカタールで仲介役と話し合っていると明かした。アメリカのバンス副大統領からイランの安全保障のトップに届いた書簡を「より広い対話に向けた前向きな一歩」と評価したの。ブルームバーグによると、イラン側は、ホルムズ海峡を再び開くまでの自分たちの計画を、7日から2日に早める案も出しているそうよ。

アメリカ側も、似たような二本立て。ルビオ国務長官は「攻撃を再開する決定はしていない。大統領は外交での解決を望んでいる」と話した。トランプ大統領も「戦争はまもなく終わると思う」と言っている。一方でウォール・ストリート・ジャーナルは、アメリカが湾岸の国々に、中間選挙のあとに攻撃が再開される可能性に備えるよう伝えたと報じているわ。

こぶしと握手。どちらか一方が嘘、というわけじゃないの。両方とも本気。それが、いちばん厄介なのよ。

ここまでの9カ月をおさらい

ちょっと長くなるけれど、ここで一度、地図を広げておきましょう。

2026年2月28日、アメリカとイスラエルがイランを攻撃して、戦争が始まった。イランはアメリカの基地や周りの国に反撃し、ホルムズ海峡を閉じた。

4月には、パキスタンの仲介で停戦。でも、パキスタンの首都イスラマバードでの話し合いはまとまらず、アメリカは4月13日から、イランの港に出入りする船を止める海上封鎖を始めた。

6月17日、両国の大統領が「イスラマバード覚書」に署名したと報じられた。戦争を終わらせ、60日間で最終的な条件を話し合うという内容とされているわ。

ところが7月8日、双方の攻撃で停戦は崩れた。トランプ大統領は停戦は「終わった」と述べ、それからは、ときどき戦闘が起きる状態が続いている。そして今、戦争は9カ月目に入ったの。

片手でこぶし:「場所を選ばない」報復

今回、イランが使った言葉は「地理的な制限なし」。ずいぶん広い表現よね。

普通、サービスの提供地域が広がるのは歓迎されるものよ。全国配送対応。海外発送可能。世界中どこでもアクセスできます。でも、報復の対象地域を広げるという話しに、グローバル展開の精神を持ち込まれても困るのよ。

しかも、どこまでを意味するのかは明らかになっていない。中東の外まで含むのか。今回の報道だけでは、はっきりしないの。これはイラン側が示した方針で、国外への具体的な攻撃計画が確認されたわけではないわ。

こういうとき、SNSは親切ね。政府が説明していない部分を、世界中の自称専門家が無料で埋めてくれる。根拠はないけれど、想像力だけは国境を越えているわ。

ハメネイ師は、2月に戦争が始まってから、公の場に姿を見せていない。軍のトップを集めて指示を出したことが明らかになったのは、国のトップになってから初めてだと報じられている。

ルビオ国務長官は、イランが自分たちの要求が通らなければ、周りの国のエネルギー施設を攻撃すると暗に脅していることを批判している。石油やガスの施設が狙われれば、それはもう中東だけの問題じゃないわ。

片手で握手:カタールと「前向きな一歩」

一方のカタールでは、外交の話し合いが続いている。

イランが求めている条件は、イスラマバード覚書のあとにかけられた制裁の解除、この地域のアメリカ軍の削減、石油の取引の制裁の例外の復活、そしてカタールなどにある凍結された資金の解放。仲介役からは、イランの核開発についての提案も伝えられているそう。

条件が多い? そうね。でも、交渉というのは、最初は高めに言っておくものでしょ。大事なのは、席を立たずに、まだ話し合っていること。

ただし、軍事的な選択肢が消えたわけではない。考えてみれば、不思議な話しよね。「平和的に解決しましょう」と言いながら、相手に見える場所で武器の点検をしている。レストランで「今日は割り勘にしましょう」と提案しながら、テーブルの下では相手の財布を狙っているようなもの。

これを外交では交渉力と呼ぶのかもしれない。あたしなら、まずテーブルの下の手を見せていただきたいわ。

それに、話し合いが続いていることと、まとまることは別の話し。6月にも、署名までしたのに、3週間で崩れたんだから。

アメリカの「選挙のあと」

トランプ大統領は以前、中間選挙の前にはイランを攻撃しないと話していた。そして今、湾岸の国々には選挙のあとの攻撃の可能性に備えるよう伝えたと報じられている。Fox Newsは、アメリカ中央軍が軍事的な選択肢を大統領に説明したとも報じているわ。

もちろん、これで「11月4日に攻撃が始まる」と決まったわけじゃない。ルビオ国務長官が言うとおり、決定はまだしていない。でも、選挙という大きな予定が、戦争の時計にも影響している。それは、知っておいていい事実よ。

ホルムズは、ほとんど止まったまま

世界の石油の大動脈、ホルムズ海峡。ここは今、ほとんど止まっている。

IMF PortWatchの集計では、10月25日に海峡を通った船はたった2隻。危機の前は、1日に約85隻が通っていたとされる航路よ。船の位置のデータは集計のしかたによって数字が違い、同じ日の通航をもう少し多く数えるデータもある。でも、どの集計でも、ふだんの交通量から大きく減っていることは共通しているわ。

世界の石油を運ぶ大動脈が、ほとんど採血くらいしか流れていない。世界経済にとって、健康診断の結果を待っている場合じゃないわね。

さらに10月29日から30日にかけて、タンカーが次々と被害を受けた。イランの革命防衛隊は、許可のない航路を通ろうとしたタンカーが機雷に触れたと発表し、別のタンカーは小さな船から船体に爆発物を仕掛けられたと報じられている。

原油の値段も高止まりしている。北海ブレント原油の先物は10月30日、取引の月によって1バレル113ドル台から117ドル台で取引を終えた。10月の1カ月で約15%上がって、4カ月続けての値上がり。4月以来の高い水準よ。

原油の値段は上がる。ガソリン代には補助金が入る。そして、その補助金をいつまで続けるのかという話しが始まる。結局、戦争の請求書は、形を変えて家計に近づいてくるのよ。

イスラエルは、誰が舵を取るかまだ決まらない

この戦争のもう一方の当事者、イスラエル。10月27日に行われた総選挙の結果、ネタニヤフ首相の右派の陣営が53議席、アイゼンコット氏が率いる野党の陣営が48議席、アラブ系の政党が19議席を取った。

国会の過半数は61議席。どの陣営も単独では届かなかったの。これから、どこが誰と組んで政権をつくるのかという話し合いが始まる。まとまらなければ、また選挙になる可能性もあるわ。

アメリカは選挙の直前。イスラエルは選挙の直後で、次の政権がまだ決まっていない。戦争の当事者のうち二つの国で、国内の政治が大きく動いている。それも、今の状況を読みにくくしているのよ。

日本のあたしたちへ

ガソリン170円は、本当は170円じゃない

原油がこれだけ高いのに、ガソリンスタンドの値段は、なぜか落ち着いている。不思議に思わない?

資源エネルギー庁の燃料補助のサイトによると、10月26日時点のレギュラーガソリンの全国平均は170.1円。でも、補助がなかったら212.9円になる計算なの。差は40円以上。この差を埋めているのが、国の補助金よ。

しかも、補助の額はどんどん大きくなっている。10月29日からは1リットルあたり52.4円と、これまでで最も高くなった。前の週は42.8円だったから、1週間で約10円増えたのね。

つまり、あたしたちはガソリンスタンドで払う代わりに、税金で払っているの。レシートには170円と書いてある。でも、本当の値段は、国のお財布から見えないところで払われている。ガソリン代が安く見えるのは、請求書の送り先が変わっただけなのよ。

補助金にも、出口の話しが出てきた

ところが、この補助金にも出口の話しが出てきた。

10月28日、高市首相は、今は1リットル170円程度に抑えているガソリン価格を、12月以降、春先に向けて毎月5円程度ずつ引き上げるよう求める自民党の提言を受け取った。首相は、すでに経済産業大臣に補助の見直しを検討するよう指示しているわ。

つまり、原油の値段が下がらなければ、今は補助金で抑えられている値上がり分が、少しずつ店頭の値段に出てくる可能性がある。

1リットル5円。聞くと大したことがなさそうでしょ。でも、毎月5円なら、3カ月で15円。40リットル給油すれば、1回600円の負担増になる計算よ。

もちろん、まだ政府の正式な決定ではないし、原油の値段や為替が動けば、実際の値上がり幅は変わる。毎月必ず5円ずつ上がると決まったわけではないわ。それでも、値段を抑える方向から、補助の出口を考える方向に話しが動き始めていることは見逃せない。

値札を見て安心していたら、今度はその値札自体を少しずつ書き換えるという話しになってきた。家計にとっては、なかなか落ち着かない模様替えね。

今のうちにできるのは、自分の家がひと月にガソリンや灯油にいくら使っているかを、一度数えてみること。それから、電気代とガス代も忘れないで。電気やガスの料金には、燃料の値段の変化を数カ月遅れで反映させる「燃料費調整」という仕組みがある。だから、10月の原油高は、冬の明細に遅れて届くかもしれないの。来月からの明細は、金額だけでなく「燃料費調整額」の欄も見てみてね。

握手か、こぶしか。待つあいだに整えること

11月3日のアメリカ中間選挙が終わったら、何が起きるのか。攻撃が再開されるのか。外交の話し合いが前に進むのか。今の時点では、どちらとも言えない。

だから、どちらかに賭けないこと。

戦争が広がれば、原油はさらに上がり、株は揺れるかもしれない。話し合いがまとまれば、原油は下がり、逆の動きになるかもしれない。どちらに転んでも、慌てて投資のポジションを大きく変えるのが、いちばん危ないの。投資全体を見て、ひとつの方向に偏りすぎていないかを確かめておくこと。

そして、先日の備蓄の記事で書いたことも、もう一度。水と食料と携帯トイレ、それに少しの現金。これは戦争に備えるためじゃなくて、何が起きても数日をしのぐための保険よ。

ただ一つ確かなのは、戦争の当事者でない日本も、その経済的な影響から無縁ではいられないということ。原油の値段が動けば、ガソリン、物流、電気代、そして家計に波及する。戦争を始めるかどうかは、あたしたちには決められない。でも、家計の備え方は決められる。

今日のまとめ

  • イランは「報復は場所を選ばない」と言いながら、カタールでは話し合いを続けている。アメリカも「外交が望み」と言いながら、選挙のあとの攻撃の可能性に備えさせている。こぶしと握手は、両方とも本気
  • 戦争は2月に始まり、6月の覚書は7月に崩れた。今は9カ月目で、ホルムズ海峡はほとんど止まったまま
  • 原油は1カ月で約15%上がり、4月以来の高い水準。イスラエルは選挙で過半数を取った陣営がなく、次の政権が決まっていない
  • 日本のガソリンが170円なのは、1リットル50円を超える補助金のおかげ。その補助金にも、少しずつ出口の話しが出てきた
  • 選挙のあとに何が起きるかは誰にもわからない。だから、どちらかに賭けず、家計と投資の偏りを確かめておく

世界の指導者たちが握手するのか、こぶしを振り上げるのか。その結果を待ちながら、あたしたちは自分の財布を守るしかない。だって、世界の政治家たちは何度でも交渉をやり直せるけれど、家計の赤字には停戦協定なんてないんだから。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

One hand makes a fist, the other offers a handshake. Your job is to keep your own hands steady.


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※この記事は、2026年11月1日朝(日本時間)までの報道にもとづく。 ※主な出典:ブルームバーグ(ハメネイ師の指示、アラグチ外相とルビオ国務長官の発言、2026年10月31日)、Axios、フィナンシャル・タイムズ、ロイター、ウォール・ストリート・ジャーナル、Fox News(アメリカの攻撃再開の可能性と軍事的選択肢の説明)、The National(原油価格とタンカーの被害、10月30日)、IMF PortWatch(通航データ)、JNS、タイムズ・オブ・イスラエル(イスラエル総選挙の結果)、資源エネルギー庁の燃料補助のサイト(ガソリン価格と補助額)、KAB(自民党の提言、10月28日)、戦争と停戦の経緯に関する資料。 ※原油価格は10月30日の北海ブレント原油の先物の終値で、取引の月によって113.43ドルから117.64ドル。 ※ハメネイ師の「地理的な制限なし」が中東の外の標的を含むかどうかは、報道からは明らかでない。アメリカの攻撃再開の可能性は報道によるもので、2026年11月1日時点で決定は発表されていない。 ※イスラマバード覚書は、公開されている文書と署名された最終文書が同じかどうかを確認できていないため、条項は引用していない。 ※ガソリン価格(170.1円)と補助がない場合の価格(212.9円)は10月26日時点。補助額(52.4円)は10月29日から11月4日まで。補助の段階的な縮小は与党の提言で、2026年11月1日時点で政府の正式な決定ではない。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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