市場また手のひら返した|昨日ビビって今日は安心してる(PPIも冷えたけど、まだ早いわよ)

冷えた6月米PPIの通知表を前に安心へ傾く市場と、AIをインフレの犯人ではないと弁護するウォーシュFRB議長のイメージ。前年比5.5%への鈍化、利上げ据え置き確率85%超、ドル円162円を象徴するSassy Moneyの解説記事用サムネイル。 経済

昨日あたし、CPIの記事でこう締めたのよ。「Inflation cooled. The Fed didn’t.」で、その翌日。もう一枚、冷えた通知表が届いたの。

今度はPPI(生産者物価指数)。しかも面白いのが、昨日と同じ「冷えた数字」なのに、市場の反応は真逆に振れたの。昨日は「利上げくるかも」でざわついてたのに、今日は「もう利上げないでしょ」で落ち着いたのよ。

一日で手のひら返し。昨日は「利上げくる!」って青い顔で叫んでたのに、今日は「やっぱこないかも」ってケロッとしてる。

市場ってね、恋愛相談してくる親友くらい、言うことがコロコロ変わるのよ。昨日「もう別れる」って泣いてた子が、今日「やっぱ好きかも」って言ってくるやつ。あれと同じ温度で数千億円が動いてるの。こわいでしょ。

まず数字:CPIに続いて川上も冷えた

PPIっていうのは、あたしたち消費者が払う値段(CPI)の一歩手前、企業が仕入れる段階の物価よ。工場や卸の「仕入れ値」ね。ここが上がると、めぐりめぐって数カ月後にスーパーの棚に乗ってくる。だからCPIの「予告編」みたいに見られてるの。

その6月PPIが、こう出たわ。

  • 前年同月比プラス5.5%。市場予想の6.2%も、前回の6.5%も下回って、3月以来いちばん低い伸び
  • 前月比マイナス0.3%。予想は横ばい(0.0%)だったのに、まさかの低下。しかも昨年8月以来のマイナスよ
  • 変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアPPIも前年比プラス4.7%(予想5.1%を下回る)と、こちらも減速

主役はまた、あの子。

ガソリンが前月比で約12%下落したのが、全体を冷やした主因なの。昨日のCPIのMVPもガソリンだったから、2日連続の同じヒーローよ。6月の米イラン停戦で原油が安かった、あの余韻がまだ効いてるってこと。

ブルームバーグはこう指摘してる。この数字は「イラン戦争がまた激しくなる前の、川上の物価が落ち着いてた時期を映したもの」だって。……そう、これって”昨日の天気予報”なのよ。この話しはあとでする。

で、なんで今日は市場が「真逆」だったの?

ここが今日いちばんの見どころ。

昨日のCPIのとき、市場は一瞬「利上げ遠のいた」と喜んで、そのあとウォーシュ議長の「高インフレ容認しない」でしゅんとなって、むしろ7月利上げの確率が上がったのよね。ところが今日、PPIまで冷えたのを見て、市場はついに腹を決めたの。「2連続で物価が冷えたなら、さすがに7月の利上げはないでしょ」って。

数字で言うと、7月末FOMCでの金利据え置き確率が85%超まで跳ね上がったわ。昨日まで五分五分でヒヤヒヤしてた利上げ観測が、一気にしぼんだの。「据え置き=現状維持」に市場が賭け始めたってことよ。

昨日は同じ”冷えた数字”に身構えて、今日は同じ”冷えた数字”で安心する。

何が変わったかって、数字が2枚に増えただけ。1枚だと「まぐれかも」、2枚並ぶと「傾向かも」に見える——市場の心って、それくらい単純なところがあるのよ。テスト1回目より2回目のほうが、先生も信じてくれるでしょ。あれと一緒。

ウォーシュ議長、今度はAIを弁護し始めた

さて、ここからが一番おいしいところ。

同じ7月15日、ウォーシュ議長は上院銀行委員会で証言に立ったの。そこで彼、こう言ったのよ。「AIインフラの整備に伴う物価の上昇は、必ずしもインフレ的とは言えない」。

……ちょっと待って。あなた、覚えてる?

先日あたしが書いた「FOMC議事録は家族げんか」の記事。あのとき、FRBの中の人たちは会議でAIを”インフレの犯人”みたいに名指ししてたの。データセンター建設ラッシュで電力も設備も値上がりして、それが物価を押し上げてる、って。議事録はまるでAIを容疑者席に座らせてた。

それがどうよ。今日は議長本人が、その容疑者を弁護し始めたの。「AIでチップの値段が上がってるのは認める。でも、それがそのままインフレになるとは限らない」って。むしろAIは生産性を上げて、長い目で見れば物価を抑える側かもしれない——という、彼が議長になる前から持ってた持論に戻った格好ね。

議事録では犯人、議長の口では弁護対象。同じFRBの中で、AIの扱いがこんなに揺れてるの。昨日はAIが容疑者、今日は議長が弁護人。FRB、金融政策のかたわらで法廷ドラマまで始めたわ。AIからすれば、昨日は事情聴取されて、今日はもう不起訴。この司法制度、仕事が早すぎるのよ。

しかもこのウォーシュ議長、昨日は「高インフレ容認しない」ってタカ派の顔を見せたばかり。今日は「AIの物価上昇はインフレじゃないかも」ってハト派寄りの顔。二日で二つの表情を使い分けてるの。市場が彼を読みきれないのも当然だわ。

ついでにもう一つ。彼は同じ証言で、トランプ大統領に対して「FRBの独立性は維持する」と繰り返し説明したの。利下げしろと圧力をかけたい大統領に、「口は出させないわよ」と釘を刺した形。物価の話しも、政治との距離の話しも、どっちも「わたしはわたしで決める」で一貫してるのね。そこだけはブレてないわ。

日本への影響

さて、あたしたちの財布の話し。

ドル円:162円台で小動き、でも円高には振れず

今回のPPIで、ドル円は162円47銭から162円13銭へ、ほんの少しだけ円高に振れたの。「米国の利上げがなさそう=ドル金利が上がらない」との見方でドルがちょっと売られたわけ。でもね、たった34銭。昨日のCPIのときみたいな派手な動きはなかったわ。

なぜかって、利上げが遠のいたといっても、下がるわけじゃないからよ。据え置き確率85%というのは「金利は今の高いところで、しばらく動かない」という意味。日米の金利差は開いたまま維持される。つまり円安を支える重力は、そのまま居座ってるの。

162円台という39年半ぶりの円安水準は、今日もあたしたちの目の前にあるってことよ。介入警戒も相変わらず続いてるわ。

家計:仕入れ値が下がっても棚に届くのは数カ月後

PPIは「仕入れ値」だから、これが下がると理屈のうえでは、数カ月あとにスーパーやガソリンスタンドの値段も落ち着くはず。アメリカの話しだけど、日本も構造は同じよ。輸入物価が落ち着けば、時間差でわたしたちの生活費にも効いてくる。

でもね、ここでも同じ罠が待ってるの。この6月PPIは「イラン戦争が激しくなる前」の天気を記録したもの。

7月に入って中東はまた緊迫して、原油は高いところに戻りかけてる。

仕入れ値が下がった恩恵がスーパーの棚に届くころには、次の値上がりがもう仕入れ段階に入ってる——先々週から何度も書いてる「恩恵が届く前に逆回転」、それがPPIでもそのまま当てはまるってことよ。セール品を取りに行ったら、隣でもう新しい値札が刷られてた、みたいな話しね。

そしてもう一つ、日本のあたしたちにとって地味に効いてくるのが円安との合わせ技。

アメリカの仕入れ値が下がっても、その安くなったモノを日本が輸入するとき、162円の円安で価格が膨らむの。ドル建てで1割安くなっても、円に換算する段でその値引きが目減りする。「アメリカでは物価が落ち着いた」というニュースを見て「じゃあ日本の輸入品も安くなるわね」と期待すると、円安が横からこっそりその期待を削っていくのよ。

あたしたちの生活実感が、アメリカのインフレ鈍化ほど楽にならない理由は、だいたいここにあるわ。

新NISA目線:据え置き85%は何を意味するの?

投資でコツコツ積み立ててる人にも、今日の「利上げ据え置き85%」は関係あるわ。

ざっくり言うと、金利が今の高いところで動かないなら、企業の借金コストも一定に保たれて、株式市場にとっては「最悪の展開(追加利上げ)は避けられそう」という安心材料になるの。実際、この日の米株は物価統計を好感して続伸したわ。

ただし「据え置き」は「利下げ」じゃない。金利は高いまま居座るから、株にとって強烈な追い風が吹くわけでもない。悪材料が減っただけで、好材料が増えたわけじゃない——この温度感を押さえておくと、市場の一喜一憂に振り回されずに積み立てを続けられるわ。

慌てて買い増す日でも、怖がって売る日でもない。いつも通り、淡々とね。

教訓:数字は「昨日の天気予報」、市場は「気分屋の友達」

今日で覚えて帰ってほしいのは、2つ。

ひとつめ。経済の数字は、いつも少し前の世界を映してる。昨日のCPIも、今日のPPIも、どっちも「原油が安かった6月」の空模様を記録したものよ。それを7月のあたしたちが見て一喜一憂してる。

ブルームバーグがわざわざ「イラン戦争が激しくなる前の数字」と注釈をつけたのは、そういうこと。ニュースが届くころには、相場はもう次の景色を見てるの。

ふたつめ。市場は、同じ数字でも気分で反応を変える。昨日は冷えた数字に身構え、今日は冷えた数字で安心した。変わったのは数字の中身じゃなくて、”2枚そろった”という気分だけ。市場って、こっちが思うほど論理的じゃないの。

むしろ、昨日褒めた相手を今日けなす、恋の噂話くらいの温度で動いてる。

だからね。相場の気分に、あたしたちの財布まで付き合う必要はないの。上がった下がったで一喜一憂するより、金利差も円安も当分続くという「変わらない前提」を淡々と見ておくほうが、よっぽど足元は整うのよ。

まとめ:AIは犯人か、証人か。FRBの中でまだ揉めてる

6月のPPIは、CPIに続いてよく冷えた通知表だったわ。市場はやっと「利上げはなさそう」と胸をなでおろして、据え置き確率は85%超へ。昨日のヒヤヒヤが嘘みたいな落ち着きよう。

でも、その裏でウォーシュ議長は面白い一言を残していったの。「AIの物価上昇は、必ずしもインフレじゃない」。議事録では犯人扱いされてたAIを、議長本人が弁護した。

FRBの中で、AIが物価に何をするのかは、まだ結論が出てないの。犯人なのか、それとも生産性を上げる救世主なのか。この綱引きは、これからの金利を左右する大きなテーマになるわ。覚えておいて損はないわよ。

覚えておいて。冷えた数字が2枚並んでも、それは「安心していい」証明にはならないの。市場は2枚で恋に落ちるけど、物価の火種はまだ中東でくすぶってる。相場が浮かれてる日ほど、足元を冷静に見ておくのが得ってものよ。

金融ニュース界隈って、だいたい毎日が最終回みたいな騒ぎ方をするの。昨日は「世界が終わる!」、今日は「やっぱ続編あります!」。

Netflixだって、ここまで毎日シーズンフィナーレはやらないわよ。毎晩「衝撃の最終回」って言われたら、こっちの心臓がもたないでしょ。でもね、毎日が最終回のニュースに付き合って、自分まで毎日ジェットコースターに乗る必要はないのよ。世界が乱高下しても、あたしたちの家計はあたしたちのペースで整えればいい。

世界がどう動こうと、自分の足元だけは整える。それだけ。

Yesterday’s villain, today’s witness.


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※本記事はブルームバーグ、ロイター、日本経済新聞、時事通信、共同通信、みんかぶ等の公開情報をもとに構成しています。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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