批判が増えるほどなぜ権力は強まるの?|FIFA会長と巨額マネーの経済学

バーガンディーとチャコールを基調に、豪華な黄金の玉座の上に置かれた無地のサッカーボールを描いた明るくシネマティックな油彩風イラスト。批判の中でも巨額マネーを背景に強まるFIFA会長の権力構造を象徴するSassy Moneyの記事サムネイル画像。 経済

W杯、観てる?

あたしは試合も観るけど、気になっちゃうのよ。ゴールより、お金の流れが。……性格、終わってるわね。

普通の人は「ナイスシュート!」なのに、あたしだけ「このゴール、スポンサー価値いくら上乗せされたのかしら」って考えてる。友達が減る理由って、だいたいこういうところ。

というわけで今日はピッチの上じゃなくて、ピッチの外で一番強いプレーヤーの話しをするわ。

ブルームバーグが面白い記事を出したの。いわく、論争続きのW杯で一つだけ明らかなことがある——FIFAのインファンティーノ会長の影響力が、これまで以上に強まっている。そしてその後ろ盾は、巨額資金だと。

……普通、不祥事や批判が続いたら、組織のトップの立場って弱くなるものよね。社長なら株主総会で焼かれる。政治家なら支持率が落ちる。芸能人なら謝罪動画。Xなら「お気持ち表明」。

なのにFIFAだけ、「炎上? はい、売上更新です。」って世界線なのよ。この「ねじれ」、実は経済の仕組みで説明できるの。

今日はそれを解いていくわ。

まず批判のリストを並べるわね

2026年北中米大会、ピッチの外はこんな感じだったの。

  • チケットの高額化:今大会から変動価格制(ダイナミックプライシング)を初導入。一部で3万ドル(約480万円)超の価格がつき、欧州のサポーター団体は「FIFAが販売を独占し、競争市場では受け入れられない条件を強いている」と批判。米議員がFIFAに書簡を送る事態にもなったわ。480万円って何? サッカー観戦なの? 住宅ローンの頭金なの? あたし、その金額ならテレビの前で正座して応援するわ
  • 入国を巡る混乱:ソマリア人審判が米当局に入国を拒否され、選手が空港で長時間の事情聴取を受ける事案も。イラン代表を巡っては活動拠点の変更やサポーターのチケット無効化が報じられた
  • 政治との距離:トランプ米大統領にFIFA史上初の「平和賞」を授与。さらに米国代表選手の退場処分をFIFAが1年猶予した件では、トランプ大統領が会長に電話で再検討を求めたと本人たちが認めて、欧州サッカー連盟(UEFA)が「一線を越えた」と非難する騒ぎに
  • 会長個人への視線:7日間で10試合をプライベートジェットで観戦して回り、環境活動家から「一般人35〜55人分の年間CO2排出」との試算を突きつけられたわ(FIFA側は「費用対効果で移動手段を選んでいる」と擁護)。一般人35〜55人分のCO2って言われても、あたしなんてエアコン23℃で罪悪感抱いてるのに

一応フェアに、会長側の言い分も並べておくわね。チケットは「60ドルの低額枠も用意した、平均価格は500ドル以下で米スポーツ最低水準」、選手の処分猶予は「FIFAの司法機関は独立している」、と反論してる。

判断はあなたに委ねるわ。あたし? あたしは今日は審判じゃなくて経済担当だから。

それでも権力が強まる理由:お金の流れを見なさい

さて本題。これだけ叩かれて、なぜ地位は揺るがないどころか強まるのか。世の中ね、「誰が怒ってるか」より「誰が投票するか」のほうが強いことがあるのよ。

答えはFIFAの「選挙区」がどこにあるかなの。

まず規模を押さえて。FIFAが2026年W杯サイクル(2023〜2026年)で見込む総収益は約110億ドル(約1兆6,000億円)。

内訳はざっくり、放映権が約39億ドル、スポンサー収入が25〜30億ドル、チケットとホスピタリティで約30億ドル。インファンティーノ会長の就任以降、FIFAの年間収益は10年で8倍になったと報じられてるわ。

48チームへの拡大路線は「拝金主義」と批判もされたけど、収益の数字だけ見れば実績なのよ。

そして大事なのはここ。その収益がどこへ流れるか。

  • 今大会の賞金と支援は総額約8.7億ドル。出場するだけで最低1,050万ドル(約17億円)が各国協会に入る設計よ
  • 加盟する211の協会には分配金が支払われ、選手を送り出したクラブにも補償金が出る(前々回大会で総額2億ドル超・3倍増)

FIFAは株式会社じゃないの。211の加盟協会が1国1票を持つ、世界最大の町内会みたいなものなのよ。しかも町内会費を取られるんじゃなく、FIFAからお小遣いが振り込まれる町内会。……そりゃ会長人気あるわ。そして211協会の多くにとって、この分配金は活動の生命線。

つまりこういう構図——批判してるのは欧州のメディアや選手団体やファン。でも投票するのは、分配金を受け取る側の協会。批判する人と、票を持つ人が、別人なの。

会社で例えるとね、SNSで炎上してるのはお客さんだけど、株主総会の議決権を持ってるのは毎月仕送りを受け取ってる親戚一同、みたいな状態よ。社長が代わるわけないの。

SNSでは100万人に嫌われてる。でも投票権を持つ211人には好かれてる。だったら勝つのはどっち? SNSは拍手もブーイングも無料。投票だけ有料なのよ。

もちろん擁護側のロジックもある。「211協会にできるだけ多くの資金を集めて還元するのが会長の職務」——サウジアラビアなどからの巨額投資の呼び込みも、その文脈では「仕事」なの。

一方で、国家や政府系ファンドへの財政依存が深まってるという批判、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)の会長が皇帝ネロに例えるほどの反発も現実にある。

お金を配る力と、お金の出どころへの依存は、同じコインの裏表なのよ。

世の中ね、愛で人はついてこないことがある。でも予算は、人を動かす。……悲しいくらい現実的よね。

日本への影響

さて、あたしたちの話し。W杯のお金は、実は日本の家計とテレビにがっつりつながってるの。

放映権300億円超の請求書は、回り回って誰が払う?

今大会の日本向け放映権は、電通が約300〜350億円で一括取得したと報じられてるわ(FIFAは当初約400億円を提示したとも)。前回大会のほぼ2倍。そこからNHK・日本テレビ・フジテレビが地上波、DAZNが全104試合の配信という座組みになった。

「無料で観てるのに関係ある?」って思うでしょ。あら可愛い。世の中で一番高い無料って、それなのよ。

地上波の原資は広告費。広告費ってね、最終的には歯磨き粉にも洗剤にもカップ麺にも、しれっと混ざって帰ってくるから。

配信で観る人はサブスク料金を直接払ってる。「注目度」が数百億円に換算される世界では、観るあたしたちの時間と財布が最終的な原資なの。

そして構造の変化も見ておいて。今年春のWBCは、配信大手が独占して地上波中継ゼロ、放映権料は前回の30億円から150億円へ跳ねたと言われてる。

W杯が今回まだ地上波で観られるのは、ある意味で過渡期の風景かもしれないのよ。「スポーツはタダで観るもの」の時代が、静かに終わりつつあるの。昔は野球もサッカーも、テレビを付ければ始まってた。今は「まずログインしてください」。

時代は変わったわね。

日本代表の収支:ロマンの裏の決算書

日本代表はラウンド32でブラジルに敗退。FIFAからの賞金は成績分1,100万ドルに準備金250万ドルを加えて、約17.8億円規模と報じられてるわ。ただし日本サッカー協会(JFA)の2026年度予算は、ベスト16進出を想定して組まれてて、約31億円の赤字見込み。北中米3カ国をまたぐ遠征費の高騰が効いてるの。

つまりね、代表チームの1勝は感動であると同時に、協会の決算書の数字でもあるの。勝ち進むほど賞金が増えて財政が改善する——ピッチの上のドラマと損益計算書が直結してる。ゴールが決まるたび、サポーターは叫ぶ。経理担当は電卓を叩く。同じ歓喜でも仕事が違うのよ。

FIFAの分配金設計が各国協会を惹きつける理由、日本の協会の台所を見るだけでも分かるでしょ。

あたしたちの財布:ダイナミックプライシングという黒船

最後にもう一つ。今大会で初導入された変動価格制、これは対岸の話しじゃないわ。

需要で値段が動く仕組みは、航空券からライブのチケットまで、もう日本の日常に入り込み始めてる。

「ファンの熱量が高いほど値段が上がる」——愛が深いほど、請求額が増える世界。もう恋愛じゃない。ホストクラブの料金体系なのよ。W杯はその最大規模の実験場になってるの。

まとめ:ブーイングは票にならない

「W杯は誰のもの?」って問いに、ロマンチックな答えはいくらでもあるわ。

でも経済の答えは一つ——お金の流れが向いてる方角のもの。批判の声がどれだけ大きくても、分配金の振込が続く限り、票は動かない。ブーイングは票じゃないのよ。

世の中には、「正しい人」が勝つゲームと、「お金を配れる人」が勝つゲームがある。FIFAは後者。だから試合だけじゃなく、ルールブックまで見た人が、一番楽しめるの。

だからあたしたちにできるのは、熱狂しながらも、その裏の帳簿を知っておくこと。試合は心で観ていい。でも仕組みは頭で観るの。それが、この巨大な経済イベントとの一番健全な付き合い方だと思うわ。

スタジアムでは歓声が響く。会議室では送金通知が響く。勝敗を決める場所は、必ずしも芝生の上とは限らないのよ。

The crowd boos. The money votes.


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※本記事はブルームバーグ、時事通信・AFP、BBC報道、FIFA公表資料等の公開情報をもとに構成しています。

この記事を書いた人

40代、元外資テック・米銀行、米国生活経験あり。
東京で愛犬と暮らす観察者。
「経済的自立」がモットー。

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